ニューミュージアムで Raymond Pettibonの頭の中にトリップ エディター福田真梨のNYC 07

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 (all installation images courtesy: “Raymond Pettibon: A Pen of All Work,” 2017. New Museum, New York. Photo: Maris Hutchinson / EPW Studio)

美術館を訪れて、「この展示がよかったから、また来よう」と思うことはよくある。けれど、気が付いたら、期間が終了してしまったりして、本当に2回訪れることは稀だし、実際に、しかも同じ週に再訪するなんてよっぽどのことだ。

でも先週、そんなよっぽどのことが起こった。NYのダウンタウン地区にあるニューミュージアムで開催中のレイモンド・ペディボン「A Pen of All Work」展

レイモンド・ペディボンの名前を知らなくても、「ブラック・フラッグ」のロゴや、

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「ソニック・ユース」のこのジャケットを見たことがあるひとは多いと思う。

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1957年にアリゾナで生まれ、カリフォルニアで育ったRaymond Pettibon(レイモンド・ペティボン)。1977年に兄のGreg Ginn(グレッグ・ギン)が始めて、LAのパンクシーンを代表するバンドとなった「ブラック・フラッグ」の名付け親であり、アイコニックなロゴを考えた張本人。初期にはベースとしてもバンドに少しだけ参加していたけれど、次第に彼は、フライヤーやアルバムジャケットなど、「ブラック・フラッグ」のビジュアル面を担当するようになった。

ちょっとダークでアイロニックなイラストには、熱狂的なファンも多く、キム・ゴードンもそのひとり。友人でもある彼女のリクエストもあって、1990年には、上の「ソニック・ユース」6枚目のアルバム「Goo」のジャケットを、ペティボンが手がけた。「ソニック・ユース」のジャケットはいつもクールだけど、これは中でもとびきりの一枚。

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80年代のハードコア・パンクムーブメントから音楽シーン全般、アート、ストリートカルチャーに、ファッションまで、今も多大な影響を与え続けている彼の初期からの作品が3フロアに渡って紹介されている本展は、一歩足を踏み入れた途端、その膨大な作品量に圧倒される。

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彼の作品のテーマとなっているのは、音楽にサーフカルチャー、小説やコミック、スポーツに政治、宗教と多岐に渡り、今でこそ再び浸透したZINEも1978年から今まで作り続けている。彼が人気の理由は、ユニークなそのイラストの作風でもあるけれど、同様に魅力なのが、作品に添えられている言葉たち。

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例えば、ダイナミックな波に乗るサーファーのペインティングには、

CALIFORNIA

  1. LEARN TO DRIVE.
  2. LEARN TO SURF.

AND A THIRD THING THAT I’VE BEEN TRYING TO REMENBER FOR 30 YEARS.

「カリフォルニア

  1. 運転を学ぶ
  2. サーフィンを学ぶ

それで、3つ目は30年間ずっと思い出そうとしている」

なんて、まさにカリフォルニアを言い当てたひとことで、思わずクスッとさせられるし、(彼はサーファーではないけれど)

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ペティボンの画集の表紙にもなった、まっすぐ前を向いて一筋ほろりと涙を流す男性を描いた作品には、

MY HEART TELLS ME THAT YOU WILL NOT LISTEN TO MY WORDS AND THIS IS THE CAUSE OF MY TEARS AND CRIES.

「ぼくの心は君がぼくの言葉を聞かないだろうという。それがぼくの涙と泣くことの理由なんだ」

まるで自分に面と向かって言われているようで、思わずハッと胸に突き刺さる。

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さらに、展示会場の壁に直接ペイントされたこちらには、

GOD, I WISH I COULD LIVE FOR TWO CENTURIES! THERE IS SO MUCH TO DO, AND ALWAYS THIS FIGHT FOR TIME. MY GOYD, THERE JUST ISN’T ENOUGH TIME I WISH I COULD LIVE WITHOUT A LIVER!

「あぁ、二世紀生きられたらいいのに!やることがありすぎて、いつも時間との戦いだ。もう、ただ時間がたりない。肝臓無しに生きられたらいいのに!」

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昨年の1月には、NYを代表するギャラリーのひとつ「David Zwirner」でカナダ人アーティストのMarcel Dzama(マルセル・ザマ)とのコラボレーション展「Forgetting the Hand」を発表した。また、同ギャラリーでは、新しい展示「TH ‘EXPLOSIYV SHOYRT T」も開催予定の彼。(2月開催予定だったけれど、遅れているらしい)このひと言は、まさに彼の本音だろうし、私たち観客の気持ちの代弁でもある。だって、毎日やりたいことがありすぎる。

インタビューはあまり受けないことで知られるペティボンだけれど、こんな風に彼の頭の中にうずまくアイデアや意見、興味のあることは、作品の中にもう詰め込まれている。ペティボンの展示は、まるで押し寄せる創作意欲に沸く彼の大きな波に乗っているようで、時に激しく、時に心地よく、私たちにいろんな刺激を与えてくれる。

New Museum, bookstore, NYC, Benoit Pailley

New Museum Bookstore Photo: Benoit Pailley

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ミュージアムの1階には、彼の作品集の横に、一冊のZINE が並んでいた。これはペティボンのビッグファンであり、彼のZINEとフライヤーのコレクターでもあるアーティストNoah Lyon(ノア・ライオン)の作品。ペティボンのイラストの横にゆるキャラ風の自分の作品を並べているペティボン公認のパロディZINEだ。ノアはペティボンのイズムを継ぐ若手有望株で、今季の「コム・デ・ギャルソン」のコラボレーターとしても注目を集めている。

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あー2回来ても、まだ足りない。せっかくだから、ゴールデンウィークに日本からやってくる友人を連れて、また来ようと思ったけれど、こちらの開催は4月9日まで。残念と思った方もご安心を。彼の作品がたっぷり掲載された展覧会のカタログ「Raymond Pettibon: A Pen of All Work」は本展さながらのボリューミーな一冊で、彼の言葉も合わせて、1点1点じっくりと作品が楽しめる。ページをめくって、ペティボンの頭の中に、ぜひトリップしてみては?

ちなみに、NYのミュージアムは、毎週1日、フリーアドミッションや入場料を自分で決められるサジェスティッド・ドネーションの日を設けているところが多い。ニューミュージアムは毎週木曜日の19:00-21:00、MoMAは毎週金曜日の16:00-20:00などなど。旅行中はスケジュールもパンパンになるけれど、買い物帰りやディナーの前のちょうどいい時間。世界中のアートが集まる街、ニューヨーク。あんまり知らないからで、スキップするのはもったいない。ミュージアムに来たら、きっと好きなものが増えるはず。そう、ペティボンのように、気になるものは1つでも多い方がいい。

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New Museum
235 Bowery, New York, NY 10002
☎212-219-1222
営:11:00〜18:00(木〜21:00)
休:月

福田真梨 Mari Fukuda

エディター&ライター。出版社の編集者を経験した後、フリーランスに。現在はNYを拠点に活動中。先日、友達の誘いでMrs. Smithのライブを観に行きました。ギターバトル「Shred For Your Life」で優勝した実力派ギタープレイヤーなのですが、タッキー&エレガントに女装した、そのお洒落なルックスに夢中に!なんと、今季「グッチ」のアイウェアキャンペーン(監督はペトラ・コリンズ!)にも登場しています。2つの世界観がぴったり♡


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