オルタナティヴ・ロックのパイオニア、身長198センチの轟音ギター・ヒーロー、サーストン・ムーア。 「そもそもロックンロールとは女性のエネルギーの音楽なんだ」と説く彼に直球で迫ってみたら?


 

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ロックの限界を拡張し続けたバンド、ソニック・ユース。中心メンバーのサーストン・ムーアとキム・ゴードンは、オルタナティヴなスタイルをクールに体現するベスト・カップルとして知られていた。2011年に公表された突然の離婚とバンドの解散は、ファンにとって世界の終わりを意味する大事件だった。キムがこれまでの人生と離婚の経緯について記した初の自伝『GIRL IN A BAND』(邦訳はDU BOOKS刊)は好評を博し、新しいパートナーとロンドンに移住したサーストンはエクスタティック・ピース・ライブラリーという出版社を共同運営する傍ら、ソロや別ユニットで活発に音楽活動を続けている。

来日公演の前日に会ったサーストンは、破局の痛みから完全に立ち直り、第2の人生を謳歌しているように見えた。本誌4月号を手渡し、モデルとして活躍中の、1人娘ココの記事を見せた瞬間、パパ・モードのスイッチが入り可愛くてたまらない様子。しかし別のページに前妻の写真を発見、思わず「キムだ」と呟きながら表情を変えないように努める姿に、用意してきた質問を投げかけてみた。

 

―あなたはキムさんと30年間バンドをやってきて、今は新しいパートナーである編集者のエヴァ・プリンツさんと出版社をやっている、つまり才能豊かな女性と常に公私を分けずに活動をともにしていらっしゃいますよね。

「ロックンロールは常にトランスジェンダーな文化だからね。ロック界の男性は女性性に惹かれてきた歴史がある。僕の新しいアルバムはまさに女性のエネルギーについて歌ったものなんだ」

―そうなんですね。私生活をともにする女性とクリエイティヴな活動も一緒にすることの良さと、もしも難しさがあれば聞かせてください。

「お互いの性差をより理解できるのが良いところだと思う。フェミニズム的な考えを理解することで、男性至上主義で愛国主義的な社会において抑圧されてきた側の人たち、つまり女性というものの在り方を知った気がする」

―ちなみに新作の全5曲中3曲を作詞した詩人ラディオ・ラディユーに関する情報がなくて……。

「偽名さ。彼は自分のことを知られたくない人物なんだ。女性の神秘性について研究している詩人で、太古の女神の文化を象徴するものは何か、とか僕と全然違うテーマだから感心してね。今作のボキャブラリーについては彼の個性が光ってる」

彼ではなくて彼女では?

恋人とはすべてを分かち合いたいタイプなのか……バレバレだよ、サーストン!!

 

サーストン・ムーア 『ロックンロール・コンシャスネス』
Ecstatic Peace Library / Hostess

gz06_Thurston Moore / Rock N Roll Consciousness (HSU-10122) (jyake-sya)

3年ぶりの5thアルバム。サーストンによれば「コンシャスネスとは物理的な世界と精神世界の間に存在する意識のこと」。フレッシュな傑作!

Photo: Masayuki Shioda
Text: Natsuo Kitazawa