アーティスト・Colliuと行く!「横浜トリエンナーレ2017」の楽しみかた

11月5日まで横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下の合計3会場で開催されている「ヨコハマトリエンナーレ2017『島と星座とガラパゴス』」。国内外の約40名のアーティストが集結した本展では、紛争、難民・移民の問題、イギリスのEU離脱、ポピュリズムの台頭など近年の社会問題が激変する一方で、益々人々がネット上の小さなコミュニティの中だけに身を置くような世界の島宇宙化が発展している現状を俯瞰している。それらの複雑に絡み合った現状を「接続」と「孤立」と題し、個人と社会、私と他者、国家や境界の問題など多岐にわたる展示を公開。

横浜美術館に着くとすでにエントランスでは、アイウェイウェイによる救命ボードと実際に難民が使用した救命胴衣による巨大なインスタレーションが出迎える。そんな壮大な展覧会へ印象的な目元のキャラクターを用いた作品を作ることで知られるアーティスト・Colliuと行ってきた。昼からでも全会場回りきれないほど、1つ1つの作品を読み解きたくなる本展から、ここではColliuの気になる4作品をご紹介!

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アイ・ウェイウェイ(艾未未)《安全な通行》2016 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景 ©Ai Weiwei Studio

伝統工芸と現代美術の接点とは
会場を入ってしばらくした所に突如現れる白い部屋。一見ただの白い部屋だが上を見渡せば無数の細いワイヤーが広がっている。金細工師の家系で生まれたことを背景に表現としての美術そのものやその意義に関心を持ち始めたインド拠点のプラバワティ・メッパイルによる作品。「現代性のみの美術表現をする作家もいるけど、こういうふうに自分のオリジナリティや過去の文脈に現代性を組み込んで表現する作品は綺麗だよね」とコリュが話す通り、作家自身も「伝統」と現代美術のミニマルな手法との間に接点を見出し、それらが融合した空間への潜在的な可能性を引き出すことに試みた。

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プラバワティ・メッパイル《yt/forty two》2017 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

オークションeBay上に出展される作品
そんなクラシックな作品から一転、Colliuの爆笑の嵐が止まなかった展示がニューヨーク拠点のロブ・プルイットによるオークションサイト・eBayを用いた展示。

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ロブ・プルイット《ロブ・プルイットのフリーマーケット》2017 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

彼の身近にあるもの、使わなくなったものなど様々なガラクタが並び、特にパンダのアイテムが何故か多い。アイテムそれぞれにはキャプションが書いてあり、まるで深夜のテレビショッピングのような彼独特の謳い文句がおかしくてチャーミングだった。例えばColliuの2倍サイズの「16. 巨大なパンダの座れるぬいぐるみ」のキャプションは「このパンダはロブのスタジオに15年間いりびたっていました。テリー・リチャードソンがロブのポートレイトを撮影したときに使われたものです。このときに撮影された自身の写真を、ロブは珍しく気に入っています。セルフィーをとって、インスタグラムに投稿するのにうってつけ ♯ImwithRobPanda」

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ロブ・プルイット《ロブ・プルイットのフリーマーケット》2017 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

また、オークションサイトeBayに出展している商品の隣には、壁一面に様々なシチュエーションにいるオバマ元大統領のペインティングが並ぶ。オバマ元大統領が在職していた8年間、毎日ニュース記事を元に描いていたペインティングの数は、なんと2922枚!一貫してアメリカ国旗の3色を抽出したような赤・
青のグラデーションで描かれていた。彼は一体なぜこんな毎朝ニュース記事を模写していたかというと、純粋にオバマ元大統領が好きで、また彼の動向を追うことでアメリカが良くなっていく様を見れるような期待がきっかけとなり始めたとか。

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ロブ・プルイット《オバマ・ペインティング2009/1/20-2017/1/20》2009-2017 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

重量挙げの選手たちが歴史的な人物の彫像を持ち上げる?
横浜美術館をあとに横浜赤レンガ倉庫1号館では、ベルリン拠点のクリスチャン・ヤンコフスキーのユニークな映像作品、写真展示が並ぶ。身体と公共彫刻の関係性について言及する本作品。なんと重量挙げのポートランド代表チームの現役選手がワルシャワ市内の歴史的人物の彫刻を持ち上げようとする「重量級の歴史」と題された映像作品が会場に流れる。まるでスポーツ番組かのようにニュースレポーターが軽快に実況し、8名程の選手が必死に彫刻を持ち上げていく姿は最初滑稽に見えるものの徐々に応援したくなり、持ち上がった瞬間はなぜか本物のスポーツ観戦のような嬉しさがこみ上げてくる。

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クリスチャン・ヤンコフスキー《重量級の歴史》2013 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

映像作品の他にも、横浜の公共彫刻の気の流れをよくするため、マッサージ師が診断を行う新作を通じて、ある時代の象徴でありながら、歴史的と分断したようにみえる公共彫刻を、現代の文脈において捉え直そうと試みる。実際に赤レンガを出て港の方に歩く途中にも映像内でマッサージしている彫刻を目にすることができる。

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無数の絵画で出来上がる部屋
赤レンガ2F奥の部屋に踏み入ると、そこには中国の伝統的な民家が現れる。壁に掛けてある写真や棚、装飾品もすべてよく見てみると絵画であることに驚く。生活空間であることを匂わせる各部屋は、幼い頃に作家が頻繁に通い、区画整理のために今年解体されてしまう祖母の家をモチーフとしている。
時代を感じさせるロゴや写真、くたびれた家具など個人の生活環境が、社会制度の変化によって暴力的に激変してしまう。またそれに伴い個人の記憶さえも制度によって書き換えられていくという制度と個人の関係性について表現した作。その作家の想いは、この部屋の隅々まで描かれた精密な絵画や絶妙な配置から十二分にも感じられる。

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ドン・ユアン(董媛)《おばあちゃんの家》2013 ヨコハマトリエンナーレ2017展示風景

他にもここでは全てを取り上げられないほどに、アイウェイウェイ、Mr.、オラファー・エリアソン率いる世界各国から様々なジャンルのアーティストが参加している。中には、いつものTOILETPAPER MAGAZINEの印象とは異なるマウリツィオ・カテランの作品も。小さな個展の集合体のような本展は、まさにタイトル通り星が緩やかにつながる星座や島が点在する多島海をイメージさせる。
そのように国籍、ジャンルを超えて様々な表現や個性が許容される展覧会会場の空間そのものが現状の社会問題に対するメッセージなのかもしれない。
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Colliu(コリュ)

アーティストとして活動しつつモデルとしても活動中。目が特徴的な図形的の人型のモチーフを中心に、ドローイング・絵画・立体作品など、様々な手法を織り交ぜながら独自の世界観を発表している。

HP : http://colliu.com/

instagram 

ヨコハマトリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス」
日程:11月5日(日) *休館日:10/12, 10/26
会場:横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下ほか *上記の有料会場以外でも関連するアートプロジェクトを実施する予定
開場時間:10:00-18:00(最終入場17:30) *10/27-29, 11/2-11/4は20:30まで開場(最終入場20:00)

Ginza_WEB_アート_倉田さん
Yoshiko Kurata

1991年生まれ。魚座。プロデューサー/コーディネーターとして百貨店・ファッションブランドと仕事をしているほか、雑誌「QUOTATION」などでライターとしても活動している。学生時代に夢中になったロンドンや東京のファッションから影響を受け、ファッション、カルチャー、フォトグラフィーなどを体系的に考えるのが好き。最近見に行った展示は、小林健太 / Wolfgang Tillmans / BALENCIAGA 展覧会。
http://yoshiko03.tumblr.com/