1人の女性を撮り続けた20年間、写真集『アンナ/Anna』が刊行。写真家エレナ・エムチュックとアンナ、2人の関係性とは

10月9日まで原宿のBOOKMARCにて数々のファッション写真を手がける女性フォトグラファー・エレナ・エムチュック(Yelena Yemchuk)による写真『アンナ/Anna』刊行記念の展覧会が開催されている。

ニューヨーク拠点のエレナは、これまでに『Intalian VOGUE』『Dazed and Confused』『Violet』など多岐にわたるファッション雑誌で活躍するほか、KENZO, Dries Van Nottenなどのキャンペーンフォトも手がけてきた。

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そんな彼女がまだティーンエイジャーだった頃に出逢った1人の女性・アンナを撮り続けた20年間が本書籍128ページに詰まる。アルバムのように並べられたモノクロ写真に時たま大胆にカラー写真が現れ、2人と会ったことがなくともページをめくれば、そこには信頼し合っている2人だけの親密な距離感が自然と感じられる。9435-19_0120年間撮りためたものから厳選した写真だけでもそれほどの強度を持った濃厚でドリーミーな写真集、そしてその2人の関係性についてエレナに話を聞いた。

 

■1989年頃にレストランで働いている時に、たまたまお客さんとして来たアンナに出逢ったそうですね。全く赤の他人として出逢ったアンナの最初の印象とその後の印象を教えてください。

私がまだティーンエイジャーの頃に、彼女と当時のボーイフレンドに出逢いました。一瞬にして2人とも当時私がみた中で一番かっこいいカップルだと感じたのです。当時、彼女は少し距離を置いているシャイな様子でしたが、次第に友達になるにつれて、彼女の繊細さや素敵な所を知っていきました。

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■彼女の存在とともに自身のフォトスタイルも築き上げていきましたか?

出逢ったのは1989年ですが、私はアメリカに、彼女はイタリアに住んでいたので一緒に撮影をし始めたのは1994年頃からです。90年代に彼女を撮り始めてから私のアーティストとしてのヴィジョンが確立しました。彼女は初めて私が自分のヴィジョンや方向性を見出し撮影し始めた被写体の一人です。ヴィジョンを築き上げていくことにおいて、いつまでも彼女はとても重要な存在です。

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■どのようなシチュエーションで撮影するのでしょうか?2人の親密さが写真集から十分に感じられました。

ある程度予定を立てて撮影します。すべてのアイディアは私がしたいことから始まります。公園に行ったり、スクールハットを見つけたり、とてもシンプルなアイディアを元に撮影しに行きます。もちろんたまにどこにも行かずに、宿泊しているホテルで撮影することもあります。私がメイクアップすることだってあります。どこで撮影しようとも、一貫して撮影する時は私たち2人しかいないのです。なので、すべての写真がとても実験的です。こんな感じでやってみよう!というような感じで。とても本質的な感覚なのです。

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■20年間も撮りためた写真を写真集のために厳選するのは中々大変だったと思うのですが、どのようなポイントでセレクトしましたか?

そうですね、とても大変でした。数十年前の撮影した当時にプリントアウトした写真もありましたが、今回写真集に使った写真はすべてネガの状態から選びました。無数に広がるネガから興味のあるものと小さなプリントをスキャンして、またそこから写真集に載せるにあたって一番ベストな写真を選びました。

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■写真集でも展覧会でもモノクロ写真の中に時たま現れるカラー写真が特徴的でした。モノクロとカラーそれぞれで意味合いが異なるのでしょうか?

写真集のデザイン制作をしてくれたたStudio191のローラとデイビットと相談してカラー写真も載せようという話になりました。カラー写真はそんなに多く載せずに、とても特定的であり色の強さを感じることができます。なので、オールドファッションスタイルも混ぜようと考えて、ごく一部に載っているカラー写真はリアリティを表現し、モノクロ写真はとてもドリーミーな雰囲気を表しています。でもそれは私のすべての写真において言えることで、色彩はとても強さを持ちます。カラー写真で撮る時も色彩はとても強い表現を持ち、私も色彩を操りながら撮影を行います。なので、カラー写真は私にとってとても大切なのです。ファッション写真では、もちろんモノクロ写真の強さもありますが、それはカラー写真が持つ強さとは全く異なるものです。モノクロ写真では被写体そのものを表現でき、カラー写真では色彩そのものだけを意識するからです。おそらく私自身がカラーフリークなんだと思います。

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彼女が言う通りモノクロ写真ではアンナ自体、そしてその当時の2人の距離感をノスタルジーに感じることができ、カラー写真ではアンナという1人の女性、当時の撮影場所など写真に写るすべてを立体的に感じ取れる。そしてすべての写真が10〜20年以上経ったいまでも写真としての強さ、表現の豊かさを放つ。

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写真集『アンナ/Anna』
Yelena Yemchuk

編集:菅付雅信
アートディレクション:Studio 191
編集・発行:ユナイテッドヴァガボンズ
A4サイズ、128ページ、ハードカバー+クロス掛け。印刷は1000dpiの高精度印刷(通常の印刷物の約3倍の精度)。
価格:4500円+税

写真展『アンナ/Anna』
開催期間 2017年9月28日〜10月9日
ギャラリー開廊時間:12:00 -19:00
開催場所 BOOKMARC 東京都渋谷区神宮前 4-26-14

 

エレナ・エムチュック(Yelena Yemchuk)

ウクライナ出身。1970年にキエフで生まれ、10代前半でニューヨークに移住。パーソンズ美術大学やパサデナのアートセンターで学んだ後、ロックバンドのスマッシング・パンプキンズの主なPVやアルバムのアートディレクションを手がけた。

1997年からはファッション写真を中心に活動し始め、『イタリアン・ヴォーグ』『ヴォーグ・ジャパン』『Harper’s Bazaar』『Numero』『Dazed and Confused』『Another Magazine』『Lula Magazine』『The New Yorker』『W』『Violet』など数多くの雑誌で活躍。KENZOやアナ・スイ、ドリス・ヴァン・ノッテンのキャンペーンも担当する。

2011年3月には写真集『Gidropark』を出版。2005年から2008年にかけて彼女が撮影したキエフの遊園地での写真を収録している。アメリカを活動の拠点としているものの、彼女は毎年ウクライナに帰国している。

Studio 191

NYを拠点にするローラ・ゲニンガーとデヴィッド・オルテガを中心としたグラフィック・スタジオ。主なクライアントに、ルイ・ヴィトン、ジバンシィ、シュプリーム、マーク・バイ・マーク・ジェイコブズ、ナイキ等。雑誌は『AnOther』のアートディレクションを手がける。シュプリームのグラフィックや広告を数多く手がけ、現在話題のルイ・ヴィトン&シュプリームのグラフィックも彼らによる。Studio191  URL: http://studio191ny.com/

 

 

 

 

Ginza_WEB_アート_倉田さん
Yoshiko Kurata

1991年生まれ。魚座。プロデューサー/コーディネーターとして百貨店・ファッションブランドと仕事をしているほか、雑誌「QUOTATION」などでライターとしても活動している。学生時代に夢中になったロンドンや東京のファッションから影響を受け、ファッション、カルチャー、フォトグラフィーなどを体系的に考えるのが好き。最近見に行った展示は、小林健太 / Wolfgang Tillmans / BALENCIAGA 展覧会。
http://yoshiko03.tumblr.com/