パルコの広告の印象的なファッションビジュアルの謎。M/ M (Paris)が描くPARCOワールドとは?

近頃、パルコの広告がかなり変わっているという噂を聞く。不思議な衣装を着たモデルや、アート感漂う写真や映像。この印象的なファッションビジュアルの謎について制作スタッフの込めた思いを訊いた。


PARCO M/M(Paris)

1969年、ファッションビルという当時は前例のない形態の商業施設としてオープンしたパルコ。画期的だったのはその業態だけでなく、シーズンごとに作られてきた広告だった。石岡瑛子や井上嗣也などのアートディレクター、操上和美や上田義彦などの写真家など、日本が誇るクリエイターを起用したパルコの広告は時代を超えて多くの人たちの心に今も色濃く残っている。そして、そのインパクトは、海を越えた芸術大国フランスにまで届いていたようだ。時は80年代、パリのアートスクールに通っていた2人の学生は、このパルコの広告を見たときの凄まじいインパクトを今でも忘れないという。そう、この若者こそが、現在、パルコの広告を手がけるM/ M (Paris) の2人なのだ。

「2014年、初めて日本からパルコの広告の依頼がきたとき、本当にうれしかった。学生時代から憧れていたクライアントの仕事ができることに興奮したよ。これまで数多くのファッション広告を作ってきたが、具体的な商品を使わない仕事というのは初めてだった。これはファッション広告でありながら、商品を売るためのものではなく、パルコという会社のストーリーを描いていくのだと考えました。その物語はブランドの歴史を語ることでも、デザイナーのアイデンティティや最新の洋服を写すのでもなく、完全に自由なストーリーテリング。その分、起用するスタッフは、その内容を十分に理解し、より発展できる力が必要不可欠だった。2014年の初シーズンから2年にわたって撮影してくれたオランダ人女性のヴィヴィアン・サッセン。彼女はファッションフォトグラファーでありながらアーティストとしても活動していて、この環境のなかで芯のあるビジュアルメイキングを行う実力と経験を持ち合わせていた。そして、そのストーリーをさらに力強く発展させてくれたのがヨーガン・テラー。彼はより実験的に、ワークショップという形式を使ってまったく新しい絵を生み出した。これらのビジュアルはまさに今後10年経っても色褪せないものだと確信しています」

さらにパルコの広告を作る上では、まずいくつかの根底となるコンセプトを作ってきたと話す。 「まったく新しいパルコというビジュアルランゲージを作る。それは、1年を通して同じコンセプトのビジュアルを描き続けることであり、シーズン性や女性の美しさなど、いくつかのクリエイティブのルールを一貫して表現していくことでした。その結果として、世の中の人がパルコのビジュアルとはこういうものだという認識を持ってくれることを願いました」

PARCO M/M(Paris)

2014年からの3年間で確実にパルコというアイデンティティを視覚的に作り上げてきた彼らが、今年新たな方向性に向かって動き始めた。

「過去3年間で手がけてきたコンセプトはある意味で完成されたと思っています。実際に数多くの広告賞もとることができました。そこで、今年はパルコの歴史に敬意を払いつつ、さらなる進化を求めました。それまではファンタジーや物語性を強調したものでしたが、今年はよりドキュメント性の強いストレートな表現。そのために大切になる写真家として起用したのがイギリス人のアラスデア・マクレランでした。彼は現在のファッション界の最前線で活躍するクリエイターでありながら、イギリスの多くのユース像を撮り続ける作家でもある。今回、そんな彼の2つの側面を上手く表現するために、アラスデアが作品として撮り続けてきた〝少年〟たちの写真をプリントした洋服を女性モデルが着飾るというプランを考えました。写真としては、これまでのものよりもシンプルにストレートな表現ではあるが、〝少年を着る女性〟という少し不思議な構造が、パルコで描いてきた世界観にもつながっています」

PARCO M/M(Paris)

PARCO M/M(Paris)

これまでのファンタジー感あふれるロケーションでの撮影から一転、2017AWビジュアルはスタジオでのカラーバックというシンプルな撮影となった。

「亀倉雄策さんが手がけた1964年の東京オリンピックのポスターを見たとき、とてもクォリティの高いストレートな写真とタイポグラフィーの広告だと思いました。これは写真でもイラストレーションでもない、まぎれもないグラフィックデザイン作品。今年のポスタービジュアルに関してはまさに同じようなアプローチで取り組みました。ヴィヴィアンやヨーガンはどちらかというと、ペインターのように絵画を描くようなアプローチの作家。対してアラスデアはとてもストレートな写真表現をする人です。そんな彼の特徴を生かすという意味でも、今回のビジュアルをより〝フォト・グラフィック〟なものにシフトしたことは正解でした」

力強い写真と、M/M (Paris) が描いたハンドライティングのタイポグラフィー、そして自由な感性でレイアウトされたパルコロゴ。シンプルながらも、とても計算されたビジュアルから、〝パルコらしさ〟を感じてしまうことに感心する。

PARCO M/M(Paris)

PARCO M/M(Paris)

そして、数多くのファッション広告を手がけるM/M (Paris) にとって、パルコというファッションビルが作る広告の意味については。

「まず共通しているのは、どういったアイデンティティを持っているかをビジュアルとしてはっきりと表現すること。そして、そのパーソナリティを確かめた上で、今、何を言うべきかを考えます。そして誰に向かって伝えるべきかを理解した上で、限りなく一対一の対話になるようなメッセージを考えます。これが、人数の多いグループに向けたものであれば、多くの人はそのメッセージを聞こうとはしないでしょう。一対一での会話の方が相手もきちんと話を聞いてくれることと一緒だと思っています」

そう、このパルコの広告は、それを見ているファッションの大好きな日本の女性ひとりひとりに向けて直接投げかけるように作られているのだ。

PARCO M/M(Paris)

M/M (Paris)
マティアス・オグスティニアックとミカエル・アムザラグの2人からなるクリエイティブデュオ。ファッション、アート、音楽、演劇など、まさにフランスという国が物語るような、さまざまなカルチャー(文化)を総合芸術として捉え、数多くの媒体を使って表現活動を行う。

Photo: Masato Kawamura Text&Edit: Akira Takamiya

GINZA2017年12月号掲載[PR]