大森立嗣監督×三浦しをんがタッグで描く、映画『光』。出演する井浦新さんに本作の魅力を教えてもらいました

大森立嗣監督×三浦しをんが映画『まほろ駅前』シリーズぶりのタッグ。本作に出演する井浦新さんに、映画『光』の魅力について訊いた。


―新さん扮する信之の、光のない目が怖かったです。

芝居じゃなかったですもんね。入っている感覚というか、本当に共演者に恵まれて、現場で彼らとの関係の中からああいう人物像がピタっと作られたんだなと。

―長谷川京子さん、橋本マナミさん、特に瑛太さんとの掛け合いは印象的でした。

ずっと一緒にお芝居をしてみたいと思っていた瑛太君が演じた輔と対峙したときに、信之である自分の中で感じるものがあって。芝居をするときの衝動や感情を頭で処理せず、身体が先に動いちゃうような状態で、ある意味、自分はだんだん人間じゃなくて動物になっていたんでしょうね。道徳や倫理とかが全部外れていくような、僕の中で野性が呼び覚まされながら演じていました。野性といっても、閉ざされた島で生き物の進化の過程がある時点で止まっていて、生命力が濃く研ぎすまされてしまったような野性味なんです。

―輔は信之という光しか見えないという感じで、まっすぐ信之に向かっていましたね。

周りから見れば、そんな愛情表現しかできない彼らは、何かが壊れて欠落してしまっている人ですよね。でも、特に輔と信之の関係が映画で描かれる結末に向かっていくのは、幼なじみってことも性別をも超えた、動物的な愛情があるからで。命に関わるような傷を負って苦しんでいるんだったら、楽にしてあげたいという。人間は理性があるからそれができないけど、動物だったら急所を食いちぎってあげて、何ならそれも食べてしまうような、そんな感覚です。

―そういう作品を生み出してしまう、大森立嗣監督の魅力ってなんだと思いますか?

大森作品を観ていつも思うのは、人間に対してものすごく興味がある人で、人間の心を撮りたいんだろうなと。でも、心って芝居じゃ映らないんです。監督は、役者が本を読んでカメラの前に立ったときに、どんなものを見せてくれるのかを無言で突きつけてくるんです。だから、「どういうふうにしたらいいですか?」という野暮な質問もできない。その瞬間に出てきたむき出しの、純粋な表現を見せて監督を喜ばせたいというか。そのために自分がどんなパフォーマンスができるのかが、勝負にはなってしまうんですけど。

―考えることを突きつけてくる作品だと感じました。

観る人の経験を、作品が問うてきますよね。ただ単に、最悪の人しか出ていないような、わけのわからない作品だと感じる人もいらっしゃると思いますし。でも、今の時代だからこういう作品が必要とされてるんじゃないかなと思うところもあって。道徳や倫理でいろんな表現さえも押さえ込まれていこうとしている。言ってみれば、何の当たり障りもなくいることがいいとされる風潮がどんどん高まるなかで、誰かのための薬になるか毒になるかという光り方も僕はいいんじゃないかと考えていて。観てくださった方が何も感じられないわけがない、そういうものを作りたいんですね。

コート ¥58,000、シャツ ¥19,000(共にサージュデクレ | ギャラリー・ド・ポップ)

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美浜島で暮らす信之は、交際中の同級生・美花を守るため、ある男を殺害。その後、津波が島を襲い、信之と美花、幼なじみの輔は生き残る。25年後、信之の前に輔が現れ……。音楽をジェフ・ミルズが担当。11月25日より、新宿武蔵野館ほか全国公開。

©三浦しをん/集英社   ©2017『光』製作委員会

Photo: Koichi Tanoue Styling: Kentaro Ueno Hair&Make-up: Atsushi Momiyama (BARBER BOYS) Text: Tomoko Ogawa Edit: Shun Sato, Akira Takamiya

GINZA2017年12号掲載