サンローランの新クリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが初めて手がけたキャンペーンが発表される

 

GINZAでおなじみの自称モード界のご意見番プロフェッサー栗山による「モードそうだったのか!!」。独断と偏見を交えながら最新ニュースを嚙み砕きます。

今年4月にサンローランのクリエイティブ・ディレクターに就任したばかりのアンソニー・ヴァカレロ。ベルギー出身の36歳で、2009年に設立した自らの名を冠したブランドで知名度を上げていた。そんな彼が初めて手がけたサンローランのキャンペーン画像が発表された。

 

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PHOTO BY COLLIER SCHORR

 

わくわく。

 

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PHOTO BY COLLIER SCHORR

 

あ、あれ。

手前は男性?

 

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PHOTO BY COLLIER SCHORR

 

あれ、裸?

 

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PHOTO BY COLLIER SCHORR

 

服着てないじゃん!!

 

と、6月終わりに公式インスタグラム ウェブサイトでヴィジュアルが発表されて話題となったように、いっこうに服が出てこない。同時に公開された映像内で、黒いチューブトップとスキニーパンツを着用しているくらいだ。

 

ファッションの会社なのに服が出てこないキャンペーン、といってすぐに思いつくのがコム デ ギャルソンである。コレクションとはてんで関係のないようなヴィジュアルや、文字だけ、などが多い。高い広告費を払うからにはちゃんと打ち出したいイメージでスタイリングを見せて、客の購買意欲を掻き立てたいところだが、持ち前の反骨精神を発揮してか、ファッション広告への既成概念に対抗しようとする心意気も感じられる。半年しか展開しない1シーズンの数体のルックを見せるよりは、いつどのタイミングで見ても通用するような、ブランドの根底にある考え方を打ち出し続ける。そうした先を見据えたポリシーも垣間見える気がする。

 

今回のサンローランの場合は、別にファッション広告の何たるかに一石を投じているわけではないだろう。2016年秋冬までは前クリエイティブ・ディレクターのエディ・スリマンが手がけていて、このタイミングで着用させる適当な服がない、という事情ももしかしたらあるのかもしれないが、具体的な服が登場しないおかげで、コム デ ギャルソンが大きなイメージを打ち出すことができているように、アンソニー・ヴァカレロがこれから展開していくであろう全体的な世界観が読み取れる気がする。

 

エディは夜のストリートやクラブで遊んでいるようなモデルを好んでいたが、まだまだ無名のピュアな男女を起用している。前回紹介した  新デザイナー起用の際のタイプ分け、

 

  1. 個性が強いデザイナーがブランドイメージを一新・改革する
  2. 優秀なデザイナーがブランドイメージを緩やかに維持・発展させる

 

によれば、カリスマ性のあるエディは1の典型だ。「サンローランってこんなブランドだったっけかな…」ともやもやしているうちにいつの間にか伝統的なブランドを自分色に染めてしまった。次のクリエイティブ・ディレクターにヴァカレロ氏が指名されたニュースが流れた時は、そんなカリスマエディの後ということもあり、上記タイプ2の方向?と目論んでいた。しかし、新生サンローランは少々異なるベクトルのようだ。かと言ってブランド創設者ムッシュ・サンローランのイメージそのまま、というわけでもない。

 

新デザイナーのお披露目の仕方はさまざまあれど、今回のような服を見せる前に自らの世界観を先出しするような戦法は、今までになかったのではないだろうか。10月に発表される2017年春夏コレクションで全容が解明するはずで、今はエディともムッシュとも違いそう、ということくらいしかわからないが、当初より期待感が増したのは事実です。

 

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プロフェッサー栗山

Professor Kuriyama
GINZAで独断と偏見による論を自由気ままに披露している自称モード界のご意見番。その自らの好みを貫き通すファッションは周囲に「怖い」と恐れられがちで、「怖い女」の異名もとる。

Text&Edit: Itoi Kuriyama