少し前になるが、2017年10月号で声特集を担当した。声に着目したのは、女友達の意外なひとことがきっかけだった。
とある大企業で管理職に就くその友人は、自分の声が嫌いで、会議で発言するのが苦痛で仕方がないという。内容そのものではなく、声に自信がないから、堂々と話せない。
この話をいろんな人にしてみると、私も私もが続出。でも声って生まれつきのものだから仕方ないよと諦めモードのみんなを見て、なんとか解決策を探ってみたいと思ったのだ。(こんなお悩み相談や小池未樹さんのコラムもどうぞ)
そんなときにたまたまた吉本ばななさんの記事を読んで知ったのが、「こえ占い千恵子」さん。渡りに船。行くしかない。
することといえば、千恵子さんとおしゃべりをするという、たったそれだけ。私の場合は幼少の頃の出来事から現状まで恐ろしいほど言い当てられ、あまりに面白くそして溜飲を下げ、いろんな人に薦めまくった。結果、多くの知人友人が千恵子さんのもとを訪れ、それぞれに興味深い体験をしたようだ。私の周りに千恵子さんを中心とした大きな輪が広がった。
千恵子さんのアドバイスで印象的だったものはいくつもある。人から褒められたら素直に受け取ること。よく頑張っていると自分に言ってあげること。すべて私の声から”ノイズ”という情報をすくいあげて、千恵子さんなりの方法で読み解いていく。「家の中の温度が一度上がったらいいじゃない?旦那さんも子供たちもきっと嬉しいじゃない?」と千恵子さんは言う。
同じ生年月日の人はいても、この声は自分にしかないものだ。その声をすっぽりくるんで、さすってくれるような力が、千恵子さんにはあって、帰り道は足取りが軽くなる。
声特集での収穫をもうひとつ。友人の紹介で知り合ったMinnie P.さんには声のアンチエジング方法として喉のストレッチを教わった。やり方は簡単で、高音と低音を交互に出すだけ。声帯は低音の際には閉まり、高音の際には広がって伸びる。よく使っておくと、声が老けないのだ。騒音レベルMAXの環七を自転車で疾走するときには、必ず行うようにしている。カラオケでも広瀬香美のあとは中森明菜、そしてチャットモンチー。声のアンチエイジング。
ある日ラジオからとんでもない透明感のある声が聞こえてきた。そのひとは原田知世さんだった。ああ、この人はすごいな。そんな声に会うと、とても嬉しい。今回はちょっと目には見えないものについてのお話でした。