足もとのセクシーとヘルシー、どっちも欲しい!
「パンプス選びはブラジャーの如く」
葛飾北斎の娘・お栄は、「女の足はセックスに夢中になると、こう指が曲がるもの」と父に教えたという伝説があります。絵師としての才能を受け継ぎ、晩年の北斎の助手を務めていたお栄は、「美人画にかけては娘にかなわない」と北斎も認める腕前だったようです。さすが美人画の名手の観察眼!女性はセックスの最中、足の指や足首、ももやお尻に力を入れることで、骨盤底筋の緊張がサポートされオーガズムに達しやすくなるのです。
普段全く運動をしなかった女性がジョギングを始めた途端、「セックスがぐんと気持ちよくなった」とパートナーに喜ばれる、なんてこともよくある話で、下半身の筋肉を適切に鍛えることは性の快感度を高めるのに有効です。
そのせいなのか、女性の足元はセクシャルなイメージとつながりやすく、ハイヒールを履くことで引き締まっている足首やキュッと上がったヒップのラインには、エロティックな美しさを感じます。さらに私は近頃、ハイヒールを履きこなしている人の「体力」や「心意気」みたいなものを想像し、なんだかそこにも感動してしまうのです。
先日、丸の内の大型書店ですれ違ったグレイヘアの女性がハッとするほど端正で、思わず目で追ってしまいました。年齢相応のシンプルで品のいいパンツスタイルに、ベージュのパイソン柄のパンプス。ヒールの高さは5㎝くらいだったでしょうか。ヨガを始めてからペタンコ靴ばかりだった私は、なんだか急に「履けないものだとあきらめず、もう一回ハイヒールに挑戦してみたい」という気分になりました。
タイミングのいいことに、ここは書店。ちょうど見かけた靴の選び方についての書籍を読んでみると、自分の靴選びに大きな間違いがあったことに気づき、クラクラしてきました。
【自分の足囲を測ってみよう!】
以前、百貨店の靴売り場で「足の横アーチが減少していて、甲の幅が広がっている状態」と言われたことがあり、「なるべく横幅の広い靴を選べばいいんじゃない?」と思い込んでいました。ところが靴選びの最新本には、「日本人は自分の足を”幅広・甲高”と勘違いしている人が多すぎる。そのせいで靴屋にはE~EEEサイズの足幅の大きい靴ばかりが並んでしまっている。大は小を兼ねるけれども、これでは靴の中で足が滑ってしまい、どんな靴を履いても痛いという状態に。もっと自分の足を細かく測定して合う靴を探すといい」とあり、足の正しい測定方法や靴を試着するときの観察ポイントがたくさん記載されています。
その夜、早速メジャーで足を測ってみると、私の足に合う靴の横幅はB~Cとなります(JIS規格で靴の幅は小さい方からA~E・EE・EEE・Fと設定されている)。いわゆる靴のサイズ(足長)は知っていましたが、自分の足の甲を測り、それをもとに靴を選んだことはありません。なるべく幅の広い方がいいだろうとEEEの靴を履いていた私は、予想外だった自分の足幅の小ささに、「本当にこの測り方で合ってる?」と不安になります。さらに、座って足を宙に浮かせ測るのと、立って体重を乗せて測るのとでは、結果がだいぶ違ってきます。メジャーを握りしめたまま、自分の測定にいまいち自信の持てない深夜2時。これはもうプロと文明の利器に頼ろう…とパソコンを開き、銀座にある「三次元足型測定器」を開発した企業が展開しているシューフィッティング専門店を予約しました。
【ブラのサイズのように足のサイズを意識】
「痛くないハイヒールを求めている」ことを伝え、早速3D測定をしてもらいます。専用の測定装置に足を入れると、私の足があっという間に3Dでディスプレイに現れるではないですか!これは間違いなく、見慣れた私の足!すごい!
測定してくれたシューフィッターさんも足の痛みに悩まされたことからこの道に進んだとのこと。
「鰻澤さん、自分のブラジャーのサイズってアンダーもトップもわかっていて、太ったり痩せたりしたらその都度買い換えたり調整したりしますよね。靴もそんなふうに、自分のサイズを細かく知ってもらって、身体の変化に合わせて調整をしながら履いてもらえるといいなって思います。では計測結果を見てみましょう。ワイズと呼ばれる足囲はBですね、そしてかなりかかとが小さいです。」
わお!
それって、私はBカップなのにEカップのブラの売り場で「おかしいなぁ、合うサイズがない」と探していたようなものですね!!どうりで合う靴がないはずだわ……。
小さいワイズを取り扱っている靴屋さんにこのまま向かって、ついに念願のハイヒールをゲットしちゃう?と買い物スイッチが入った私に、シューフィッターさんのアドバイスはこう続きました。
「ワイズBの靴でも、かかとの緩さで足が前滑りして痛みが出ると思われます。おそらく小さいワイズを揃えているお店に行っても、完全にぴったりで痛くないパンプスを見つけるのは難しいかな。」
合う靴が売っていないのなら、仕方ない。ついに人生初のオーダーメイドをするときが来たようです。清水の舞台からミラクルダイブ!
興奮しながら、「あの、確かこちらってハイヒールのオーダーメイドもやっていますよね……」と切り出した私の足指には、思わずギュっと力が。女はショッピングで興奮したときにも、足指がこう曲がるもの。