06 May 2018
Bスポット療法とスケール精度。聞く知的体のすすめ

房中養生アドバイザー鰻澤智美さんに聞く知的体のすすめ、“見えないもの”を感じる知性とは。美しく幸せでありたい、誰もがもつ願いにさまざまな方法で取り組む 鰻澤さん。知性の芽は、その人自身の中に隠れているという。
Bスポット療法
Bスポット療法(※1)なるものをご存じでしょうか。連載を読んでくれたことがある方は「Gスポット?」と思うかもしれませんが、Bですよ、B!ここ数カ月、週イチで耳鼻科に行きこのBスポット療法を受け、痛みに悶える数時間を過ごすのが定例になっています。
どんな治療かといいますと、塩化亜鉛という薬品を染みこませた綿棒で、鼻の奥と喉の間にある上咽頭(風邪のとき痛くなる例のところ)をガシガシと擦過してもらうのです。塩化亜鉛には炎症を引かせる作用があるのですが、この治療、炎症があればあるほど出血し、強烈な痛みを伴うのです。
薬液のついた捲綿子で鼻の奥をグリグリされるのは、インフルエンザ検査の100倍、いや、500倍くらいの衝撃! あまりのしんどさに涙をにじませ、血の混じった鼻をかみつつ、「ムリっ!こんなの続けるの絶対ムリ!!だって人生で一番痛いもん!」と止まない痛みに身体をふるわせ、治療後は何も手につかない半日を過ごすのです。
なぜ、こんな痛い思いまでして、上咽頭をいじめているのかといいますと……。
今から10年ほど前、私は開業した治療院の業務に追われ、自分のキャパシティを超える働き方を続けていました。ドリンク剤を常用し、甘いお菓子をつまんではエネルギーチャージをしたつもり。気づけば、人生で一度しかならないと聞いていた帯状疱疹を2回も繰り返していました。さらに数年後、花粉のシーズンでもないのに壊れた蛇口のように鼻水が止まらなくなり、そして毎晩、最後の患者さんの治療が終了すると同時に全身に蕁麻疹が出てくるようになったのです。どちらの症状も薬で抑え込むことができ、夢中で仕事をしているときには何も支障を感じないのですが、毎朝なんだか身体がだるい……。不快な症状が増えるごとに、徐々に不安は募っていきました。
やがて疲労がピークに達すると、喉の痛みと腫れ、それに伴う微熱を繰り返すようになりました。さすがにこのまま対症療法だけではいけない、なんとかせねばと、不調の原因を自分なりに探り始めました。職業上、運動はしているし、外側からのケアもこまめにやっています。問題はきっと内側にあるのだろうと思い、自分の症状をすべて見直した結果、たどり着いたのが「副腎疲労(※2)」でした。
副腎疲労とは、ストレスや偏った食生活、睡眠不足が原因となって副腎の機能低下状態が続き、それにより副腎ホルモンのバランスが乱れ〝慢性的な疲労感、精神不安、アレルギーなどのさまざまな症状〟が引き起こされます。私の不摂生はまさに副腎を疲れさせることばかりで、鼻水や蕁麻疹などのアレルギー症状や、いつも感じていたからだのだるさは、副腎疲労によるものだったのです。
試しに副腎の負担となるカフェインや甘いものをやめてみると、不快な症状は徐々に改善し、いつもよりからだが軽いことに気がつきます。もっと副腎を労わるにはどうしたらいいのか調べたところ、「慢性的な炎症がどこかにあると、副腎はその炎症を引かせるためのホルモンを頑張って出し続け、疲れてしまう」とあります。そこで、いつも喉の奥(いわゆる上咽頭)の炎症をきっかけにして体調を崩していた私は、ここを治療することが長年の不調の「根本改善」になると考えたのです。
肝心な治療の効果は……病院が混雑すると困るのであまり言いたくないのですが、ここだけの話、疲労という重たいコートを脱ぎ捨て、春が訪れたかのような軽やかボディを、久しぶりに満喫しています。
自分の中のスケールの精度を高める
病院で検査をしても、原因がはっきりしない症状はたくさんあります。個人の生まれ持った体質によってそれぞれ異なるタイプの不調があり、それがジリジリと積み重なってくる辛さは、他人に理解され難く、改善手段も見つかりにくいのだと思います。気圧や食事や運動の過不足、緊張やプレッシャーなど、一見些細なことでも、からだには思いのほか大きく響いていたりします。
そんな微細な変化を見逃さないよう、自分の中の見えない「スケール」の感度と精度を高めていくと、きっとそこに元気のヒントが見えてくるのだと思います。
私が興味をもって研究している房中養生(※3)やセクシャルコミュニケーションも、表には出てこない「見えないもの」のひとつです。ウェブの連載「性がキレイを決める 房中養生入門」にも、あなたの見えないところを変えていく小ネタが盛りだくさん。ぜひ、読んでみてください。
※1 Bスポット療法: Bは鼻咽腔=上咽頭のこと。適応疾患は慢性上咽頭炎、慢性疲労症候群、IgA腎症など。
※2 副腎疲労(アドレナル・ファティーグ): ストレスやライフスタイルの乱れで副腎の機能低下が続くと、ホルモンバランスの乱れ、慢性的疲労、精神不安、下痢、アレルギーなどの症状が起きる。唾液中のコルチゾール検査やサプリメントによる自費治療を行う病院も増えてきている。
※3 房中養生: 房中とは寝室のこと。そこで行われる性行為による健康法。食養生のセックス版のようなもの。
鰻澤智美 うなぎさわ・ともみ
ヨガ、鍼灸、カウンセリングをベースに、房中養生によるヘルスケアに取り組んでいる。ginzamag.comにて「性がキレイを決める 房中養生入門」を連載。更新のたびに読者をざわつかせる。
Illustration: Rena Yamanaka Text: Tomomi Unagisawa
GINZA2018年5月号掲載