「舌を変えれば、姿が変わる!」
「フリーズ!! はい、そのまま身体を動かさないでじっとして。そしてゆっくり意識を自分の口の中に向けてみて。あなたの舌先、どこにある?」
教えているヨガのクラスでは、後屈のポーズをする前、このように舌の位置を確認してもらっています。するとどのクラスでも半分以上の人が、上の前歯の裏、もしくは下の前歯を裏側から押すような位置に舌先が収まっていることに気づきます。
・唇は力まず“口輪筋”を使って閉じている
・上下の歯には軽い隙間
・舌先が前歯の裏よりも少し奥(ぽこっとしたふくらみ部分)にあり、舌全体が上あごに吸い付いている状態
これが「正しい舌の位置」と「理想的な口元のバランス」です。
そしてこの舌の位置が、ヨガのポーズのときに頭を支える重要な働きをします。ちょっと体感してみましょう。
まずは舌先を正しい位置に、そして舌全体を上あごにピタリと吸い上げた状態で、顔を天井に向け、首の前側をジワ~っと伸ばすようにします。そのまま舌を上あごから離してみてください。途端に首がグッと詰まるような感覚がありませんか?
胸を開いて身体を後ろに反らすバックベンドのポーズのとき、安全に重い頭を支えるために舌の筋力と安定性は欠かせません。
年々舌の筋力は低下していても、あまり気づかないものです。ボディラインやフェイスラインの変化に敏感で、筋トレやエクササイズに励んでいる方でも、毎日鏡に向かい舌の形を観察している人は少ないのではないでしょうか。
【東洋医学的な舌の診断】
東洋医学には「舌診」という、舌の形状や色で身体の状態を診る方法があります。私自身、ライフスタイルが乱れると、きまって舌の縁にギザギザの歯形が刻まれます。この舌の様子は「痰濁(たんだく)」という、身体の中の水分や潤い分の巡りが悪い状態で、むくみや冷え、関節痛などの症状が起こりやすくなります。
先日、睡眠時間が余りとれない状態で歯科へ定期検診に行ったところ、口の中をパッと覗き込むやいなや「鰻澤さん、昨日あんまり眠れなかった?」とドクターに言われました。「先生も舌を見て診断するのですか?」と聞くと、「寝不足やストレスで奥歯を噛みしめている人は、口腔内の陰圧のせいで舌や頬の内側に歯形が付くのですよ」といいます。東西古今の別なく、舌は身体のコンディションをチェックしやすい場所なのです。
【舌を意識して、美容とセックスに活かす】
スマホやノートPCなど視線が下を向く動作が増え、背中を丸めて頭を前に突き出す姿勢が続くと、舌に良くない癖がつき、二重あごや歯列を乱すなど審美性を下げてしまいます。
では、舌を意識した安定感のある姿勢とはどんなものでしょうか。
① 椅子に座り、両足の裏全体をしっかり地面につける。(姿勢の悪い人は足の踵が浮きやすい)
② 座骨を立て骨盤を起こして座り、背もたれには寄りかからず、背筋を伸ばします。(身体を横から見たとき、背骨は腹と背の中央ではなく後ろ側にあるので、背中と首の後ろを天井に向けて引き伸ばすように意識します。肩と肩甲骨はリラックス)
③ 顔を起こし、目線を水平にキープしたら、舌全体を上あごに吸いつけ、前出の「理想的な口元のバランス」を作ります。
足裏は地面へ力を伸ばすように、舌で頭骸骨を天へと押し上げるように意識します。そのまま鼻からゆったり呼吸しましょう。どうでしょう、一本芯の通った安定した身体と、どっしり落ち着いたキモチになりませんか。
この姿勢をとってから舌の筋トレをすると、舌の悪癖改善にも効果的です。
上あごに舌を吸着し続けたまま口を縦に開けていき、舌裏の舌小帯をストレッチするトレーニングや、口元と舌の筋肉を鍛える「あいうべ体操」などをしてみるといいでしょう。
舌の筋力が低下していると、下の画のように舌を平らにべーっと突き出すのも、舌をぎゅっと硬く引き締めて突き出すような動きもしづらくなります。
唇や舌はその表面積に対して脳の相当領域が広いため、感度の高い性感帯と言えます。そのため舌の筋力低下は、オーラルセックスでの性反応に大きく影響してきます。さらに、仰向けに寝たときには、筋力低下により落ち込んだ舌が気道を塞いでしまうため、ムード良く盛り上がったセックスの後に、うっかりゴォーゴォーといびきをかいてしまう原因にもなります。
見逃されがちな舌の筋力をアップさせれば、オーラルセックスの感度がアップ! そしてセックス後は安心してパートナーと深い眠りにつけることでしょう。
早速今晩から、鏡の前で舌を硬~く突き出す練習を!舌を意識することで、心穏やかな地に足の着いた感度のいい自分になれるはず。