ロンドンを拠点として活動する、ヘアデザイナーの小戸紀代子さんが気になるアーティストとコラボレーションし、その人らしさをヘアで表現。アーティストのバックボーンを探るインタビューとともにお届けします。
ヘアデザイナー小戸紀代子の“WHO ARE YOu ?” vol.8
小戸紀代子 × MOLLY @ロンドン

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MOLLY
モリー/モデル
今回はモデルのモリーさんの自宅でインタビューしてきました。彼女が16歳の時にロンドンでの撮影で出会いました。それ以降何度か一緒に撮影をする機会があり時が経つのは早いもので10年が経ち、今ではご飯に行ったりする友達です! 歳の差を全く感じさせず、寧ろ今では相談相手になってもらっています(笑)。
彼女は自分の世界を強く持っていて、強く正しく逞しく。そんな言葉が似合う、お伽話に出てくる女性戦士のようです。彼女はモデルという仕事を通して、いろんなことを吸収していて、撮影の時もモデルとしての仕事を全うしながら、撮影全体を見て長年のキャリアに基づいた意見を持ち、みんなをまとめていく。
私がヘアデザインに迷った時に「どうしようか?」と聞くと、的確なアドバイスをくれたりします。私がボリュームなどバランスに悩みながらヘアを作っていると、なんとなく良いのではないかという所で「ナイス! ここのこういう所がすばらしいね!」って声をかけてくれて、私がやりたい方向に背中をトンッと叩いてくれるのです。
何年この仕事をやっていてもコレダ!!!!と自信を持って、みんなに時間をかけて作ったものを見せるのは怖いものです。私は、作っていると作品の中に入り込みすぎていたり、テクニックに気を取られ過ぎていたりして、新鮮な目で自分の作品を見て判断することが難しい場合が多いので、モデルさんのちょっとした感想は本当に大きな道標なんです。
そして何よりも嬉しいのはモデルさんが「いいね!好き!」と言ってくれたときです。それは誰が何を言おうと正解であり、でき上がってからもモデルさんからの反応がないと、はまっていないのかも……と、どこがそのモデルさんの気にしているポイントなのか撮影が終わるまで、いや終わってからもずっと考えていたりします。
モリーさんはそんなヘアメイクさんの心情の奥底を汲み取ってサポートしてくれているのだと思います。本当にモデルさんは私の師匠であり、共に作品を作る仲間でもあります。今思い返せばこの業界にデビューしてから本当に色々なモデルさんたちに意見をもらって育ててもらっているなと感じます。感謝です。
さて、今回はモリーさんを何かのキャラクターに変身させるわけではなく、洋服を売るための撮影の髪型でもない。モリーさんそのままを表現するヘアスタイル。彼女をどう表現しようかと考えた時にナイチンゲールが浮かびました。ちなみに、本人に伝えたところ「さっぱり意味が分からない!なんで?」って感じの反応でした(笑)。
もちろん全く意識していないのだと思いますが、私からすると、いつもサポートしてくれて、真っ白な洋服を着ていて、愛に溢れた感じがナイチンゲールを彷彿とさせるのです。少し乱れた感じが良いなと感じたので、髪の毛はノープロダクトでバサっと後ろに束ねました。彼女の前髪のクセと量感がパーフェクトなので、そこはノータッチ。でもそれだとただのハーフアップで面白みに欠けるので、そこに私が作ったヘアピースをくっ付けました。そのヘアピースによって少しトップにボリュームが出て、前から見た時にビクトリアンのムードが出るので、彼女の真っ白な洋服とマッチして良いなと思いました。
とはいえ、完璧にビクトリアン時代のコスプレにならないようにモダンな要素も入れたかったので、長い縦ロールのつけ毛をリボンのように垂れ下げました。これで戦士のような雰囲気や、少しグランジっぽい「脱力した感じ」も出て、モダンで良い感じにできました!!


今回、撮影後インタビューに(メールで)答えてもらったのですが、そこで彼女は愛について話していたり、白を着る理由なども書いてあって、私がなんとなく彼女に対して感じていたことはやっぱり当たっていたのだと思いました。このシンプルなインタビューは、友達でも新たな発見があるというか、解答を読んで改めて彼女をより深く知れた気がして面白かったです。
Photo&Text_KIYOKO ODO