クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.10 強くなる意味
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.11 お母さんは魔法使い
vol.11 お母さんは魔法使い
わたしのお母さんは、魔法使いです。
多分、そうです。いやそうに決まっています。
実は、うんと小さい頃から、もしかしたら…と思ってはいました。
だって、悲しいことがあっても、お母さんに抱きしめられると嘘みたいに涙が止まったし。
散歩中に、「どんぐり拾った!」と駆け寄ると、「これは、椎の実!食べられるんだよ!」と殻を剥いて口に入れてくれたり。
Tシャツを風呂敷がわりにして、ヤマモモを取って帰った時も。
真っ赤に染まった〈エンジェルブルー〉のナカムラくんを見て、一瞬黙り込み、数秒考えた後、決意したように顔を上げ、「よく遊んだね!」って。
手を洗って着替えた後、ジャムの作り方を教えてくれました。
教科書に載っていないことを、たくさん知っていたから、お母さんは魔法使いなんだ!って。
だけど、どうなんだろう?やっぱり違うのかなって…段々と。
本当は、クラスの友達に相談できたら良かったのだけど。
朝の登校班で4年生のお姉さんたちが、「サンタクロースを信じている男子って子どもだよね」って笑っていたから。
なんとなく、言うのはやめにしよう、と思いました。
お母さん、空は飛べないし、仕事とお家のことで手いっぱい。
運動会の保護者かけっこもビリから2番目。
いつの間にか、私は塾で夜ご飯を食べるのが当たり前になっていて。
あれー?なーんだ、やっぱりお母さんはお母さんかぁ、って。
それから私もすっかり大きくなりました。
反抗期もまぁ、それなりに、いや、とても元気にやらせていただき、お母さん、本当に、大変、お世話になりました。(まだなりますけど。)
教えてもらったデミグラスソースのハンバーグ。
東京のお家でもよく、作ります。
美味しいって評判で、ちょっとだけ、得意です。
こちらはまだまだ暑くって。
スーパーに行くのも、ひと苦労、汗が目に入って痛いです。
帰って来て、少し涼んで、さて、やりますかーって。
同じ材料、同じ手順。
習った通りに作るのに、どうしてか、あなたの味には少し、かないません。
ローリエをお鍋に入れ火加減を見ながら、わたしは、あっ!と思いました。
お母さん、やっぱりあなたは、魔法使いだったんですね!
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri