クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.19 見えぬけれども
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.20 空と青と仲良く

vol.20空と青と仲良く
ライブやレコーディングをする前の夜は、その曲の歌詞をノートに書き写し、ひとり朗読する。
人は慣れてしまう生き物だから。
曲を大事にする想いは常にあれど、何を大事にしているのか、その中身を忘れてしまう。
雰囲気で歌を届けないように。
ノートに歌詞を書き、声に出して読んでみると、曲と何度でも新しく出会い直せる気がする。
単純に字を書いていると落ちつく、というのもあるけれど。
「笑った声と拗ねた顔が 胸に残り今日も眠れない 雨の降る日は会いたいかな? 言えずに触れずに時と遊ぶ」
右肩上がりの角張った文字が、罫線から少しはみ出るようにして並んでいる。
昔、好きな人の誕生日プレゼントにメッセージカードを添えて渡したら。
とても躍動的な字を書くんだね、と言われたことがあった。
「書は人なり」
ひとり呟き、苦笑いしてしまう。
夢中になると今でもたまにA罫を2行使いしてしまう私。
B罫の枠内にゆったり丸い小さな文字が収まっているのを見ると、とても可愛らしい人なんだろうなぁ、なんだかちょっと羨ましくなってしまう。
新曲「空と青」は、作詞を脚本家の北川悦吏子さん、作曲を
Alexandros
の川上洋平さんがしてくださったのだけど。
このお話を頂いた時は、何もかもが未知過ぎて、新人さんのような気持ちになった。
前作の6thアルバム『DUO』
私自身が作詞作曲したのは2曲で。
他の収録曲は、アーティストの方やクリエーターの方に提供して頂いた曲で構成している。
本当に楽しく、為になる現場で。
関わってくださった方それぞれに家入レオ像があり、それを一緒に磨いていくことが面白くて仕方なかった。
私が知っている楽曲提供のスタイルとはまた少し違って来るんだろうなぁ、と。
ぼんやり街を歩いていたら、ばったり街で川上さんにお会いして。
目に見えない流れに乗りなさいと、誰かが私に言ってるんだと思った。
難しく考えすぎずに、私が持っている全部で歌おう。
そんな気持ちで、北川さんと打ち合わせをしていたら、不意に、「一回聴いたらみんなが歌える曲にしたいのよね」と。
出来上がった曲は、仲間外れを作らない愛で溢れていた。
誰にでも分かる言葉で、想いを伝えることは易しそうに見えて、実はとても難しい。
北川さんは、そこに何度も挑んで来た方なんだ、と胸が熱くなった。
今年のはじめ、ずっとお世話になっている方から、「自我が強すぎる」と言われたことがずっと心に残っていて。
「自我があるから音楽をしている」と思う反面、なんとなく思い当たることがあった。
「空と青」は私じゃ決して作れないタイプの優しい曲で、でもだからこそ、はじめとても苦しかった。
この曲を表現する色を私が持っていなかったから。
どう歌ったらこの曲が輝くんだろう?と。
感じて、感じて、感じるうちに、光が見えた。
その時、点と点が線になり、私が私の幅を狭めてしまっていることに気づいた。
得意なこと、好きなことを突き詰めていくことは素晴らしいことで、だけど、それじゃいつか限界が来る。
自分らしさに、縛られちゃいけない、そう思った。
この感覚を忘れずに、次に繋げたい。
「空と青」に出会えてよかった。
どうか、みなさんの胸に届きますように。
自分が思う自分らしさを、みんなが思う家入レオらしさを、何度だって越えて行きたい。
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri