クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。26歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.46 人生のおかしみ
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.47 祈祷の後で
vol.47 祈祷の後で
正月三が日も過ぎ、初詣の賑わいも少しは落ち着いただろうと踏んだ予想は甘く。鳥居の向こう側ではマスクを付けた参拝客が列を成していた。賽銭箱に5円玉を入れるまで優に1時間はかかりそうだ…。呆気に取られていると「レオ」とコートの袖を引っ張る人。声の方を向くと隣で可笑しそうに私を見つめる先生の顔。去年から縁あってはじめたヨガ。全てのことに時期があり意味があること、注いだエネルギーは自分に返ってくること、心の目で世界を見ること。歌う時の呼吸法や筋肉のほぐし方はもちろん、ヨガの哲学を聞いていると「私、それ知ってる」と生活の中でぼんやり生まれる気づきや自分の中に在る考えを言い当てられるみたいで時々驚く。心と身体を整えていくヨガを教えてくれている先生と神社でご祈祷を受け、ランチを食べる新年会をしようと約束していたのだ。
あっという間に年が明け、三が日が過ぎ、気づけば鳥居の前で「この人の多さ…」と仰天する私。そんな私をよそに側にいた神職の方に「ご祈祷の申し込みを…」と慣れたご様子の先生。「ご祈祷の方はこちらです」と案内されるがまま、言われるがまま記入した書類、祈願祭のすっと背筋が伸びる空気感、授与していただいたお札と神饌。10代の頃に参加した事務所の新年会でご祈祷をして貰ったことはあるけれど、個人でのご祈祷をお願いするのは初めてでその全てが新鮮だった。清々しい気持ちで神社を後にし、何食べよう!から始まる店探し。今日はGoogleマップにもネットにも頼らず冒険してみよう!と街に繰り出し、大通りから小道に入り辺りを散策する。店先にあるメニューを眺めるも、ピンと来ず、を繰り返し入店。席についてもメニューを中々決められない2人。最終的に店員さんを呼んだ時のフィーリングで決めるという流れが一緒で密かに嬉しかった。美味しいご飯を食べながら2022年の目標や生き方、もっと先の未来について話が弾む。時間は有限で、だからどうしても優先順位をつけなくてはいけなくなる時がある。自分にとって何が1番大切か改めて考えていると、先生が「私は仕事かな」と視線を上げた。私も「そうですよね。うん、分かるな」と頷くと、「仕事というより、ヨガ。ヨガが1番大切」と今度は私の目を見て真っ直ぐ笑った。その瞬間私の心の中にあったかい優しいものが広がって「“仕事”じゃなくて“ヨガ”。“ヨガ”が1番大切って今の良い!」と気づいたら口にしていた。先生にとってヨガはもちろん仕事で、だけど仕事である以上に人生なんだって。心からヨガが好きなんだって気持ちが伝わってきた。2022年私ももっともっともっと!人生を歌いたい。
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家入 レオ
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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