クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.59小売店とスーパー
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.60軽やかな行動力
vol.60軽やかな行動力
「そうだ 京都、行こう。」心の中でそう呟くと、仕事で新大阪や名古屋に向かう時いつも横目に見ていたある広告写真が脳裏を過った。それは新幹線ホームに降りるエスカレーターの途中にある。朝早い集合でぼんやりしている意識がその写真を見ているだけでゆっくり確実に立ち上がっていくような。人を正そうとせずとも正してしまうような優美。そこにそっと寄り添う「そうだ 京都、行こう。」の華奢で涼やかな響き。このキャッチコピーに心奪われ「いつかそんな休日が来るといいな」と思っているとエスカレーターの終わりが近づき、キャリーバックを色気もなくえいっと持ち上げ23番線と24番線の間に降り立つのが常だった。だけど、やっぱり望んだことはちゃんと人生に用意されているんだ、と車窓からの風景を見ながら思っている私がいた。
楽曲制作に打ち合わせ。最近考えることに比重が大きくなって、頭は疲れているのに体は元気、みたいなバランスになってきて、今月のスケジュールを見ながら、あ、ここいらでひょいっと気分転換しよう、と。ぽんとできたお休みでインドアに過ごすのも大好きだし体調管理は大事だけれど。家にいてもずっと頭は仕事モードから切り替わらなくて仕事の日より変に消耗したりすることもあるから、そういう時は環境を変えた方がリラックスできたりする。
この話に限らず、自分の希望や気持ちをスタッフさんや周りの人たちに伝えようとすると急に気が重くなることがある。伝える前から、あれこれ想像しすぎて疲れ諦めてしまうからなのだけど。それじゃあ周りも手を貸せないよなぁと、少しずつ、伝える努力をするようになってから、それこそ少しずつ日々が変わり出した。今回も内心おどおどしながら、「ちょっとここでリフレッシュして来て良いですか?」とマネージャーさんに相談すると拍子抜けするくらい物事がスムーズに進んだ。そして私は晴れて「そうだ 京都、行こう。」を実現し、渦中にいると気づけないことを離れた場所で感じ、帰りの新幹線では新曲の構想を練っていた。
時間は平等で、使い方なのだなぁとつくづく思う。そして、怖がらずにまず伝えてみること。それが結果実現が難しかったとしても、心の声をちゃんと声にした、ということが大事で、受け止めてくれる人がいる、と思うとさらに音楽を頑張ろう、と思う。
「そうだ 京都、行こう。」の軽やかさと真剣さで音楽も遊びも楽しみ切りたい。
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家入 レオ
2022年2月20日にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。その模様を収録したLIVE Blu-ray / DVDが発売中。
さらに10月1日からは、全国9カ所をまわるツアー「家入レオ 8th Live Tour 〜THE BEST〜」を開催する。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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