クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.60軽やかな行動力
🤓COLUMN
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.61マンモスに会ったことある?
vol.61マンモスに会ったことある?
公園の原っぱで、側転をしブリッジをし徒競走を2回もした私たちは、白い月が浮かんだ空を眺めた後、少し歩くことにして立ち上がった。木や土や生き物をじりじり照らし続けた太陽が今日も1日よく働いたとあくびをする時間帯。私は夏の夕暮れが大好きだ。飲み終えた空のペットボトルで彼女のお尻を叩くとポコっと間の抜けた音がして楽しくなった。自分の腕や首、太もも。肘下と肘上で出る音が変わる事にいちいち驚き、体のあちこちを叩きながら大股で進む。スニーカー越しに伝わる柔らかい土。吸い込むと気怠い甘さが残る風。だから木の枝の向こうにコンクリートで舗装された道が見えた時、ちょっと唇が尖ってしまって、そんなありのままのリアクションをした自分を外側から眺めて、思考能力を奪う夏って良いなぁと思った。
心任せに右斜め後ろにいた彼女に目をやりながら「マンモスに会ったことある?」と尋ねると、潤んだ黒目が動きを止め「あるわけないじゃん」と想像していたよりもずっと冷静な声が返ってきた。「つまんな!駄目だよ!その返し方!」と私が身体中で笑うと彼女も弾けたようにそれに倣って「爆弾発言だよ!今の」とお腹を抱えた。
だってもう27歳だもの。彼女は明日ひと足先に28歳になるし。当たり前に大人で、それでも上を見上げればキリがなくて。焦ることもあるけど、等身大を少しはみ出るくらいの頑張りを毎日積み重ねるって事でしか越えていけないものがきっとあって。そんな現実的でしかない人生の真実は、夏の夕暮れの散歩に必要ない。「マンモスに会ったことある?」「オレンジって何色?」「猫ってワンワンって鳴くよね?」馬鹿みたいな事をもっと馬鹿にして、枠をはみ出して、子供みたいに笑っていたいんだもの。
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家入 レオ
1994年生まれ、福岡県出身。17歳のメジャーデビュー以降、ドラマ主題歌やCMソングなどを多数担当。
2022年2月20日にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。その模様を収録したLIVE Blu-ray / DVDが発売中。
さらに10月1日からは、全国9カ所をまわるツアー「家入レオ 8th Live Tour 〜THE BEST〜」を開催する。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri
2022年2月20日にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。その模様を収録したLIVE Blu-ray / DVDが発売中。
さらに10月1日からは、全国9カ所をまわるツアー「家入レオ 8th Live Tour 〜THE BEST〜」を開催する。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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Photo:Leo Ieiri