マネしてみたい、ちょっとした工夫と心がけ。肩の力を抜きつつ、真剣に未来を考えている人の暮らしとは。
青柳文子さんが実践する、SDGsのための11のアクション

青柳文子さんのエシカルな発想と小さなムーブメント
SDGs的な暮らしって、どんな感じなんだろう?モデルの青柳文子さんは、地球や社会に配慮した生活をしている一人。世界各国で見つけたエコアイテムを紹介したり、フォロワーに参加しやすい取り組みをシェアしたり、Instagramで積極的に情報発信をしている。その内容は身近なところから始められて、無理なく実践できることばかり。ストイックになりがちなイメージとは少し違う、気楽なサステイナブルライフがあると教えてくれる。
幼い頃から動植物が好きで、中学時代は地元・大分から単身北海道へ農村留学も。2児の子育てでゴミの量が劇的に増えたのをきっかけに、「自分や生き物にとっての心地よさとは?」を追求。それが自然と、今のスタイルにつながっていったそう。「エコにならなきゃ、というよりも、環境に優しくしていると心が穏やかになって、新しい発見にワクワクするんです」と青柳さん。環境先進国と呼ばれるドイツやスウェーデンを実際に訪れ、日本と違う光景を目の当たりにした。「サステイナブルな行動をみんなにもシェアしたい」。そんな気持ちをSNSから受け取って、彼女自身の生活を体験させてもらった。
サクッと実践!今すぐできる11のアクション
1. いつか誰かの手に渡るものを選ぶ
「ほしい!」と飛びつく前に、想像力を働かせて。
「捨てそうなアイテムを買わないことが大前提だけど、その品の末路を考えて、自然に還る素材を選ぶようにしています。セカンドハンドショップも定番のお買いものスポット。ヴィンテージのダッチデザインの棚と、日本製の古い照明も長く大切に使っています。いつか手放すことをイメージして、誰かが欲しがってくれるような商品を選ぶのも大事です。仕立てのいいものは長く使えるし、いざというときは誰かに受け継いでもらいやすいから。ほかにも、出番がなくなったものを “ご自由にどうぞ” 箱に入れて、玄関前に置くことも!」
2. エコバッグを忘れたら荷物を抱えて帰る
きっかけは、ドイツで見た若者たち。「お弁当容器やタンブラーを小脇に抱えて、颯爽と街中を歩く姿が素敵で、食べものを袋に入れなくてもいいんだなって。海外では、ビニール袋自体見かけることがあまりなかったですね。個人的にもプラスティック素材のプロダクトがあまり好きじゃないので、外で持ち歩いたりお家の中にたまっていったりするのがストレスで。それなら、エコバッグを忘れたとしても裸で品物を持って帰る方が、断然気分がいい」。
さらに、袋づめされていない野菜や量り売りを選び、ゴミを削減。
3. 通販の時は「簡易包装で」と記す
丁寧に梱包されて送られてくる品物。「過剰なパッキングがずっと気になっていて、『その他』の欄に一言書いています。意識が高いところだと、商品をサイズにあった段ボールに入れてくれて、緩衝材も紙製。化粧品だと再利用できる可愛い巾着に入っていることも多いです。ビッグメゾンやハイブランドこそ進んでいて、包装の工夫などでおしゃれとエコを両立していて感心します」
4. 容れ物を持ってお店に行ってみる
「テイクアウトが好きでよく利用するんですが、持参した容器に料理を入れて帰りたいとお願いする時は、自分の意図を伝えるのが大事。おちゃらけながら『地球のことが気になって(笑)』と言うと、お店の方が親身になって対応してくれることも。こんな要望が少しずつでも増えれば、そのムードがみんなに伝わって、いつかは当たり前になるかもしれない。そんな小さな希望を持っています」
5. 気が向いた時にゴミ拾い
ボランティアとしては荷が重いけど、ついでの精神で習慣化。
「子どもたちを遊ばせている間やスーパーに行った時とか、気が向いたら目についたゴミだけ拾って帰るくらい気軽な感じで。『散歩帰りにひとつだけ』と決めると、目に止まりやすくなるかも。私の場合、公園でお弁当を食べた帰り道にゴミを見つけたら、空の容器に入れて一緒に捨てたり、自分が使った公衆トイレをきれいにすることも。まわりの人に『あの人、なんか掃除してる…!』と驚かれるので(笑)、意外と見られているんですよね。その心がけが連鎖するといいな」
6. クリーンエネルギーを利用する
太陽光、水力、風力など環境負荷が少ない自然エネルギーは、日本でも選択肢が増えてきている。
「どれが一番いいかはわからないけど、自分で調べて納得した企業に決められたら、それでいいと思います。もし他に気になるサービスが出てきたら切り替えればいいし。最近気になっているのはクール・バンク。環境負荷や差別に加担する企業には融資をしない金融機関のことなんですが、自分の口座をそこに変えました。日本でもクール・バンク・ランキングが発表されていたので、気になる人はチェックしてみては」
7. 電気を使わずに過ごす時間を作る
最近、地方にお試し移住中の青柳さん。自然たっぷりの環境で過ごしていたら、考え方がどんどんシンプルになってきているそう。「明るい時間に動きまわって、日が暮れてきたら寝てしまう。太陽のリズムにしたがって暮らすようになってから、すごく気分がいいです。たまには遊びたくて、夜ふかしする日もありますけど(笑)。寝る前に、電気を消してお部屋やお風呂場でキャンドルを焚くと、とっても落ち着く。心に余裕がある時だけでもいいと思います」
8. 植物を育ててみる
「趣味にするといいことしかない」ときっぱり。今は土のことから考え始めた本格的な庭造りに挑戦していて、小さな畑で野菜やハーブを育てているそう。「草花は観ても触れても癒やされるし、空気も綺麗になる。すごくエコですよね。ゴミが出ない趣味なので、罪悪感なく楽しめるのがいい。苗木が入ったプラスティックのポットも、今はタネ蒔き用に使っています」
9. 押しつけにならないように世の中にシェア
SNSで発信する際のマイルールは?
「エコじゃないとダメ、みたいな圧迫感にストレスを感じる人も絶対にいますよね。情報をシェアするときは、必ず『私はこうしたい』という自分主体で発信しています。『〜してね』と強制するようなことは言わないです。あと、発信する前にできる限りその物事のバックグラウンドを調べる。SNSをみていて、モヤッとする時があったら、その気持ちをディグっていくと社会の背景が見えてくることも。常識がどんどん変わっているタイミングなので、自分の価値観もアップデートして、その上で自分なりに出した答えをもって行動するのが大切ですね」
10. ストイックになりすぎない
自分勝手に過ごして罪悪感が湧く日もあるけれど。「初めから完璧を目指さなくていい。ペットボトルを買ったら別の日にマイボトルを持ち歩くとか、ケースバイケースでいいと思います。いきなりゴミゼロは無理があるし、『今日はリサイクルできるパッケージのものを買ってみよう』とか、好きな使い心地のアイテムを探してひとつずつ切り替えていくと楽しいですよ。コンタクトケースをお店で回収してもらうとか、身近なことでOK」
11. 社会貢献活動には無理ない範囲で協力する
寄付はどこにすればいい?「考え過ぎて、何もできないのが一番悲しい。『何かしたい』という気持ちが大事だから、募金したいならコンビニのレジ横の箱にでも。ペットに関心があるなら、里親募集の情報を知人にシェアするのでも十分。常にアンテナをはっておく必要はないから、できる範囲で関わりましょう」
海外を訪れて感じたこと
先日スウェーデン、デンマーク、オランダを訪れた青柳さん。
「どこもSDGs的な暮らしが常識。プライベートな時間を大事にしていて、基本18時までしか働かないし、夏休みの宿題も出ない。“ニクセン(何もしない)”や“ヒュッゲ(心地よく快適)”的な生活を持続可能にしている価値観はマネしたいです。向こうで20時頃テレビをつけたら、大人が眠っている映像が朝までずっと続いていて。『今は寝る時間だよ』と北欧に叱られている気持ちになりました(笑)。あとDIYストアや塗装屋さんをよく見かけました。おもちゃや家具など、修理しながら大切に使う文化もいいですよね」
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青柳文子
1987年生まれ。モデル、俳優。大分県出身。2021年、日々の暮らしとドイツ滞在時の様子を綴った初のフォトエッセイ『あか』(三栄書房)を発表。