クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.68ツアーの日々
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.69当たり前の意味を私に尋ねて
vol.69当たり前の意味を私に尋ねて
10月1日からスタートした全国ツアーも明日の広島でセミファイナルを迎えてしまう。3年ぶりの凱旋ライブを福岡で終えた私は今夜ホテルと実家のどちらに泊まるか決めきれずにいた。スマホのロックをFace IDで解除しメールボックスから「スケジュール」の件名を見つけ出し開く。「10/30(土)」までスクロールすると10:30集合の文字。毎公演、会場に到着してから本番まで、昼食からメイク、声出しやリハーサルまでのタイムスケジュールが細かく記載されており、私はライブ前のルーティンや喉のメンテナンス時間を計算し、出発時間から逆算した時刻に起床するようにしている。
今までライブで福岡に帰った際は寸分の迷いなくホテルに泊まっていた。頼るものがあると寄り掛かってしまう気がしたし、まだ寝ている人がいるうちから動き出す申し訳なさと、これからライブをする人の邪魔をしたくない配慮と。お互いがお互いを想うことで窮屈になるならホテルに泊まる方が良いと思っていた。
だけど今年に入って、デビューしてから自分が自分に「なんとなく」課していたルールを見つめ直すようになり、「なぜこうするべきと思っているの?」と心に尋ねてみて、戻ってきた返事が「厳しい程、苦しい程良い」という類の答えだった場合、その無意識にハグして手放すようになった。
広島へ向かう新幹線の時刻が思ったよりも遅く、実家に泊まってリラックスしたら良いのに、と言う自分と、緊張の糸を切らさない方が良い、と言う自分で間で揺れて、結局私は母が運転する車に乗り、母が作ってくれた夜ご飯を食べ湯船に浸かり生まれ育った家で眠った。ホテルよりずっと深く眠れた。
翌朝、胃に軽めの炭水化物を入れた後、扉を閉め瞑想とストレッチ、筋トレをしていた私。キッチンからは、母と福岡のライブを観に来てくれていた叔母の話し声と笑い声が聴こえてきて、生活の音って良いなぁと思っている自分にびっくりした。ライブ前のルーティンは静かに粛々とこなしたいと思っていたから。開け放った窓からは太陽の光が降り注ぎ、私は1人じゃないと家に流れる空気がやさしくて、今日の広島公演は、すごく私で歌えるだろうと思った。
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家入 レオ
2022年2月20日にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。8月17日には「レモンソーダ」、9月28日には「Pain」、11月16日には「かわいい人」を配信リリースした。
全国9カ所をまわるツアー「家入レオ 8th Live Tour 〜THE BEST〜」が好評のうちに終了したばかり。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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