クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。28歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.76未完成な ニューアルバムについてのインタビューはこちら
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.77例えの個性
vol.77例えの個性
無事に撮影を終え、都内に戻る道中。信号待ちで静止している窓の外の景色をぼーっと見ていた私は、運転席からの問いかけに少し遅れて反応したらしかった。「あっ、ごめんなさい。」と慌てると、ふふふっとくすぐったい音の後に「飛行機の予約変更はできましたか?」と聞き慣れた声が穏やかに鼓膜を揺らした。「あー…!」と声を発したと同時にフラッシュバックしたのは名古屋・大阪キャペーン。
帰りの新幹線では私もマネージャーである彼女もクタクタで。クタクタなのに、無事やりきった安堵と達成感、約4年ぶりにリリースしたアルバムの広がり、何より応援してくださっている皆さんに会えたことが嬉しくて。疲れている体と、満たされた心が何処かちぐはぐで浮遊して。そんな気持ちと感覚を味わっている人が、自分の他にもう1人隣の席にいることが心強く、そして頑張ろうと思った。その時ちょうど話題になったのが地元福岡での仕事。公開収録を終えた後、私はそのまま休みを貰い、実家に顔を出してから帰京することにしていた。その為、手配済みのフライトを変更せねばならず、ネットで調べた結果電話でしかその手続きができないことが分かったのだった。
「飛行機の予約変更まだやってない…」と呟きながら、その私の答えを見越して忘れないように伝えてくれたんだな、と思った。今日の撮影場所に到着するまで片道1時間。帰りも帰宅ラッシュにハマらなければ1時間で都内に戻れるかな〜と考えながら、「今手続きの電話しちゃっていいですか?」とマネージャーとスタッフの方に断りを入れると、「どうぞ」と快諾していただいたので、指定の電話番号に発信した。一応気合いを入れて通話ボタンを押したつもりだったが、耳元につけていた受話器も10分をすぎる頃にはスピーカーホンにして、オペレーターの方が対応してくださるまで、車内で仕事の確認をしたり、たわいの無いことを話していた。
やっと繋がった電話でフライトの変更を申し出ると、予約時に付与された6桁の英数字、予約番号を尋ねられた。私が「A…B…C…1…」と伝えていく中で「D」をオペレーターの方が「B」と発音なさったので咄嗟に「あ、“B”ではなく、Every Dayの“D”ayです!」と私が伝えると、運転席と助手席から吹き出す声が聞こえてきた。自分でも、あらどうして1センテンス目じゃなくて、2センテンス目が「D」の英単語にしちゃったんでしょう、と思っていたので恥ずかしいやら面白いやらで。電話を切った後もひとしきりそのエピソードでみんなで笑って。ちょっと億劫になってしまう手続きもこれだけ笑えるなら最高だな!と思った。
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家入 レオ
2022年2月にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。
2023年2月15日にはニューアルバム『Naked』をリリース。収録されている「嘘つき」はWOWOWオリジナルアニメ「火狩りの王」のオープニングテーマ。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオが“Naked”な自分に原点回帰して気づいたセルフラブの大切さ「毒も見方次第で“あなたらしさ”になるから」 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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