近年、新しい観光のカタチとして注目を集めている「インフラツーリズム」。その名の通り、ダムや橋、トンネルなど社会インフラを対象とした観光が今、東京でも大人気なのだとか。私たちの暮らしを支えるインフラを知れば、東京の街が何倍も面白くなるはず!
方南町の地下に広がる「本当の暗闇」って⁉︎【東京インフラツーリズム】

神田川・環状七号線地下調節池 at方南町
東京都民のうち、「本当の暗闇」を知る人はどれくらいいるだろう?それを体感できる場所が都内の地下にある。地下調節池は、豪雨時に河川から一時的に水を引き入れる貯水スペース。神田川・環状七号線地下調節池は、南は地下鉄丸の内線の方南町駅から北は西武新宿線の野方駅あたりまで約4・5kmにわたって延びるトンネルで、東京郊外から都心に向かって流れる妙正寺川、善福寺川、神田川から取水を行うことができる。豪雨時にこれらの川の水量を調節することで、都心を洪水から守っているのだ。貯水量は54万㎥。25mプール1800個分というから驚く。
レクチャーで示されるデータを見ればその恩恵は瞭然で、トンネル完成以前、平成5年に東京を襲った台風11号は、総雨量288mmという豪雨をもたらし、3117棟が浸水した。が、完成後の平成16年、ほぼ同量の総雨量をもたらした台風16号時の浸水家屋は46棟。調節池により東京の街が守られていることがわかる。
トンネルの偉大さを実感したところで地下探検へ。エレベーターで地下に降りると重厚な扉があり、それが閉じると、あとは闇。懐中電灯を灯すと前方に無機質なトンネルが浮かび上がる。足元からは冷気が伝わってきて、SF映画の世界みたいだ。
しばらく歩くとT字路に突き当たり、左右に延びるさらに大きなトンネルが現れた。これが本線で、この上を環状七号線が走っている。それにしてもこのトンネル、ゴミひとつ落ちていないのが不思議だ。
「台風シーズンの後は清掃しますからね。魚やザリガニなんかも水と一緒に流れ込んでくるので、できる範囲で捕獲して川に戻しています」
人間以外の生物にまで気を配ってくれるとは、なんというホスピタリティ! 約30分間の探検を終えて地上へ出ると、太陽が眩しかった。
東京の地下に巨大な空間がある。そしてそれが私たちの安全な暮らしを守ってくれている。それを知る前と後では確かに何かが違うのだった。
エレベーターを降りてしばらく歩くとトンネルの本線と合流する。実際は真っ暗で隣にいる人も見えない。
施設があるのは善福寺川のほとり。地元のタクシー運転手は「洪水から守ってる場所」と呼んでいた。
どうやって巨大トンネルを掘ったのかがよくわかる模型も。1日に9mずつ自動で掘り進めるメカ!
レクチャーではジオラマに実際に水を流して取水と河川の水量調節のメカニズムを解説してくれる。
トンネルの一部には地元の小学生が描いたイラストがあって、暗闇の中にほっこりムードが漂う。