気がつけば、同じジャンルの本ばかり手にとっていませんか?普段、触手を伸ばさないジャンルの知識や考えを深められる読みもの(小説、漫画、WEBサイトetc..)を、その道に詳しい方に伺います。女の子のための漢方ライフスタイルブランド〈DAYLILY〉代表の小林百絵さんには、「漢方」を生活に取り入れたくなる本を教えてもらいました。
自分の世界を広げる、読みもの案内。〈DAYLILY〉代表・小林百絵さんの「漢方を取り入れたくなる3冊」

小林百絵/〈DAYLILY〉CEO
@moe.taiwan
3年前に広告代理店を辞めて、台湾で漢方のライフスタイルブランド〈DAYLILY(デイリリー)〉をはじめました。台北旗艦店、誠品生活日本橋店、大丸梅田店につづき、4月に有楽町マルイに新店舗をオープンする予定なので、今はその準備をしています。感覚をガンガンに刺激してくれるものが好きです。いい香りのもの、スパイシーなもの、おいしいごはん、ご機嫌な音楽など。時間があるときには、Netflixで海外のドキュメンタリーを観ています。みんなでヘルシーに楽しく過ごしたいと思っています。
大学院に通っていたとき、大きい瓶に漢方を入れて持ってきていた子がいました。その子は家族が台北で長年漢方薬局を経営している台湾人で、今一緒に〈DAYLILY〉を運営しているEriでした。彼女から台湾では病気でない人も日常的にいろいろな形で漢方を取り入れていて、生活の一部だという話を聞き、とても驚きました。
「漢方」という言葉は日本で生まれたものなのですが、日本では「漢方=薬」というイメージしかなくて、私も興味はあっても漢方薬局に行くのはちょっと……と思うほどハードルが高いものでした。でもEriに出会ってから漢方に興味を持ちはじめて、本を読んだり、実際に台湾に行って台湾人の生活を見たり、彼女の両親から話を聞いたりして、漢方は食事や養生法、運動、鍼灸、生活態度などを含めた広い概念で、一つのライフスタイルなんだと実感しました。
台湾ではそれがちゃんと根付いていて、風邪をひきそうだなと思ったら屋台で漢方スープを飲んだり、生理期間中は冷たいものやアルコールは控えたり、免疫を高めるものをたくさん摂って、内側から自分を守ることを当たり前にしています。日本とは全然違うので私はそれが羨ましくて、〈DAYLILY〉をはじめました。ここでは私が漢方について勉強になった読みものを3つご紹介します。
1.『こころ漢方』杉本格朗 (山と渓谷社)
この本は本当に優しい。鎌倉の薬局の先生が書いた本なのですが、読むだけで心が養生されます。漢方では“気”という言葉がよく出るのですが、この本でも何度も出てきます。“気”と聞くと、目に見えないものだし、「え、なんかスピリチュアル?」と思っちゃうじゃないですか。私もそう思っていました。でも私たちはこれから、ウイルスなど目に見えないものと戦っていかなきゃいけない。そのときに生命活動に必要な“気”や“血”といったものにもっと意識を向ける必要がでてくると思います。
この本はその大切さに気づかせてくれたし、「デートに行くとき」「ケンカしそうなとき」「月曜日の憂鬱を吹き飛ばしたいとき」「満員電車に乗る前」など、具体的でおもしろいシーンごとに、どうしたらいいかというアドバイスをしてくれます。「なんか生きづらいな」と感じたきのバイブルです。
2.『わたしは漢方美人』遠野かず実 (集英社クリエイティブコミックス)
漫画で分かる漢方入門本。小学生のとき、教科書より歴史漫画の方がずっとわかりやすかった私にとって、大人になってもそれは変わらないんだなと思った一冊です。第一章には「素人による、素人のための、素人目線の漢方まんが」と書かれています。漢方入門のいろいろな本を読んできましたが、この漫画が一番わかりやすく、漢方を生活に取り入れやすかったです。
漢方ではその人ごとの体質を“証(しょう)”といい、この本ではその証チェックや各証の日々の過ごし方なども詳しく書かれています(この証の人はこんなものを食べるといい、この証の人はこんな生活習慣を改善した方がいいなど)。「水は1日2リットル」「朝イチにはりんご」など、世間一般でいわれている美容法に踊らされるのはそろそろやめようと思いました。わたしも漢方美人になりたい。
3.『WIRED vol.32 Desital Well-being Issue』 (プレジデント社)
漢方をあつかうブランドを手がけていますが、究極は女性の一生に寄り添い、エンパワーできるブランドになれたらと思っています。学生のときに、「Well-being」という言葉と出会い、なんていい言葉なんだと思いました。心身が、Well(良好な/満足した)being(状態)。わたしもそうでありたいし、みんなでそうでありたい、そう思いました。
『WIRED』はいつも私たちを新たなところへ導いてくれますが、日本にWell-beingに関する良書がなかった中、vol.32で様々な角度からWell-beingの意味を問い、派生させています。“個”としてではなく、“わたしたちの”well-beingの可能性があるとき、わたしたちはどこで(都市で、自然で、バーチャルで)だれと(愛する人と、動物と、ロボットと)それを享受し、共有するのか。世界中で都市封鎖が行われる中、想像は膨らむばかりです。
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小林百絵
1992年生まれ。北海道出身。広告代理店を退社後、台湾人のEriと漢方のライフスタイルブランド〈DAYILY〉をはじめる。2018年に台北旗艦店を漢方薬局内に設立。その翌年に誠品生活日本橋店、大丸梅田店を、2020年4月末には有楽町マルイ1階に日本3号店をオープンする。
instagram: @moe.taiwan Twitter: @moekobayashi_tw
DAYLILY: HP instagram: @daylily.tw