年末に動画配信サービスを視聴する人も多いのでは?2020年話題になった日本のドラマを、ミクロにマクロにじっくり分析。全7回の連載でお届けします。新しい動きにも注目して。#日本ドラマの気になるTOPICS研究
変革期のドラマ事情、これからどうなっていく? 日本ドラマの気になるTOPICS研究 vol.1
すべては『逃げ恥』から始まった!
変革期のドラマ事情、これからどうなる?
いつものルーティン放送とは随分違う状況に陥った2020年のドラマシーン。まさに今が曲がり角だが、この変革の源流は『逃げるは恥だが役に立つ』にある、と語るのは早稲田大学教授の岡室美奈子さん。放送から4年近く経った今でも根強い人気で、昨年末一挙放送されたにもかかわらずこの春また特別編が再放送され、盛り上がった。
「『逃げ恥』はまず、これまでの恋愛ドラマとはまったく違うプロセスで恋や結婚を描いたことが新鮮でした。またゲイのキャラクターや、48歳の女性と32歳の男性の恋愛など、人間の生き方の多様性の描写も新しかった。以降、『おっさんずラブ』(18)、『きのう何食べた?』(19)などさまざまな恋愛のあり方をテーマにした作品が増え、さらに『トクサツガガガ』(19)などオタクが主人公のドラマも登場。これまであまり描かれなかったマイノリティを取り上げた内容に支持が集まるのは、『逃げ恥』をきっかけに、自分たちを縛る呪いに気がつき、そこから解放された結果なのでは」
一方で、いよいよ始まる『半沢直樹』(13、20)など、続編制作も増加。 「続き物は、前作以上に〝攻め〟が求められます。また、どんな作品でも、〝なぜ今作るのか〟という問いへの明確な答えがあることが重要なのですが、続編の場合、特にそこに厳しい視線が向けられます。たとえば『ハケンの品格』(07、20)なら、現在の派遣社員の過酷な状況を取り込んだ物語であるかどうかが、鍵になってくる」
また、Netflixなどの配信サービスが、オリジナルドラマを制作、配信していることも、昨今の見逃せない動きのひとつ。
「FODのリメイク版『東京ラブストーリー』(20)など、注目の作品も増えてきました。配信作品が、可能性や新しい刺激を地上波テレビドラマ側にもたらしてくれるということも、大いに期待していきたいですね」(岡室美奈子さん)
日本のテレビドラマを、“それ以前、それ以降”に分けたと言われる『逃げるは恥だが役に立つ』。「夫に従属するのでない結婚を提示し、さらに多様性のある生き方や恋愛を描いた。原作があったとはいえ、脚本を担当した野木亜紀子のフェアな眼差しがあったからこそ、“主張のあるエンタメ”として成立し、皆が共感したのでは。『逃げ恥』以降、視聴者がドラマに求めるものが、少しずつ変わってきた。昨年今年のラインナップには、そんな空気感がありますね」
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岡室美奈子
早稲田大学演劇博物館館長、早稲田大学文化構想学部「表象・メディア論系」教授。専門はテレビドラマ論や、現代演劇論、サミュエル・ベケット論など。