年末に動画配信サービスを視聴する人も多いのでは?2020年話題になった日本のドラマを、ミクロにマクロにじっくり分析。全7回の連載でお届けします。新しい動きにも注目して。#日本ドラマの気になるTOPICS研究
コロナがきっかけで始まった「リモートドラマ」の挑戦。日本ドラマの気になるTOPICS研究 vol.2

コロナ禍での突然変異!
リモートドラマという挑戦
“スタジオでの撮影ができない時期だからこそ、新たな挑戦を!”と立ち上がったクリエイター陣。彼らが取り組んだのが、打ち合わせ、撮影、編集のすべてを密にならない環境で行い作り上げる、“リモートドラマ”。各局ともトライし、スピーディに制作。
「人と会えない“今の事象”を巧みにとり込んだ方法論に、あらためてテレビが“日常と地続きのメディア”であることを実感させられました。それは同時に、テレビが本来持っていたゲリラ性を取り戻した感じがして、これはとても刺激的でした。どの作品も全員で知恵を絞り、良いものを作ろうとする気概にあふれていた。NHKは『今だから、新作ドラマ作ってみました』(20)でシリーズの3話を森下佳子、『Living』は坂元裕二が。民放でも岡田惠和、水橋文美江など大物脚本家が短時間でオリジナルストーリーを執筆。そして実際に兄弟や姉妹、夫婦関係にある俳優陣が起用されるなど、今までにはみられない動きがあったことは、うれしいサプライズでした。また、ひとつの空間で撮る、別々の部屋で収録した映像を並べる、さらには別撮りの画を合成するなど、さまざまな手法が試されたのも、特筆すべきポイント。いずれにしても今回の挑戦は、これからのテレビに大きな影響を与えると思います。ドラマづくりを考え直すいいきっかけになったのではないでしょうか」(岡室美奈子さん)
『リモートドラマ Living』(20)
広瀬アリス×広瀬すず、中尾明慶×仲里依紗など、実際に家族のキャストが登場。岡室先生のおすすめは第2話の永山瑛太×永山絢斗の、“過去に流行った料理を作る”のが仕事という兄弟の会話劇。脚本は坂元裕二。全4話。NHKオンデマンドなどで配信中。
『世界は3で出来ている』(20)
フジテレビの、“密にならない環境”で制作されたソーシャルディスタンスドラマ。一卵性の三ツ子全員を演じるのは林遣都。脚本は『スカーレット』などを手がけた水橋文美江。3役の表情の違いを演じ分けた林遣都に称賛の声が集まった。FODにて配信中。
『2020年 五月の恋』(20)
吉田羊&大泉洋主演、脚本は岡田惠和。リモートワークに奮闘する営業マンのモトオ(大泉)が、元妻のユキコ(吉田)に間違い電話をする会話劇。発案から10日で脚本が完成したとか。
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岡室美奈子
早稲田大学演劇博物館館長、早稲田大学文化構想学部「表象・メディア論系」教授。専門はテレビドラマ論や、現代演劇論、サミュエル・ベケット論など。