『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ 月9)は、田村由美の同名人気マンガのドラマ化。久能整(菅田将暉)は謎の女性・ライカ(門脇麦)と出会い、新たな事件へと誘われます。整の過去とも重なってきそうな事件とは……。第6回をドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。オカヤイヅミのイラストもお楽しみください。第5回はこちら。
『ミステリと言う勿れ』6話。ライカ(門脇麦)の謎の行動は、整(菅田将暉)を過去に誘うのか

整が戸惑うライカの存在
4、5話と一人の相手とじっくりと話し合う展開が続いていた『ミステリと言う勿れ』。6話で久しぶりにアクティブに動き回る整(菅田将暉)を見た、と思ったら、ラストでまたもピンチに陥っていた。「名探偵コナン」並に事件に遭遇する整だけれど、彼の場合、一般には開示できない情報まで共有されるほど警察に頼られてしまっているのだから仕方ないのかもしれない。さらに5話からは、謎の女性・ライカ(門脇麦)からもさまざまな事件に関わることを促されている。
整のおしゃべりに遭遇したときのリアクションは人によって違う。どうやら、イラついたり面倒くさがったりする人が少なくなさそうだ。中には我路(永山瑛太)のように、同意したりもっと話すよう促す人もいる。ライカは、整に新しい視点を与えることがある。桜の木にピンでメッセージを留めていたライカに、整は「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という諺を引いて桜を傷つけることを諫める。それに対してライカは「桜は傷つけちゃだめで、梅は傷つけていい? それは人が花を美しく見たいがための都合で、本人に聞いたわけじゃないよね」と答える。でも「桜には悪かった」と素直に認めるところもある。彼女の反応は、整にとってはこれまでにあまり経験のないものなのかもしれない。
どうライカに接していいか迷う整は、大学の先生である天達(鈴木浩介)に相談する。天達の答えは「あなたの興味を引きたいか、利用したいか、操りたいか、陥れたいか、あるいはあなたに助けを求めているか」。
わからないことだらけのライカに促され、事件に関わっていく整。早速温室の管理人・梅津(阿南敦子)が亡くなった患者のカバンを隠していたことを見つけ、さらに病院で難癖をつけてきた下戸(岡山天音)が関わっているらしい放火事件にも手を出すことになる。
整の過去と事件との関わり
1話で薮(遠藤憲一)を追求する整を見た青砥警部(筒井道隆)は、「あいつ、ずっと自分の父親への恨みを話しているようだった」と話した。3話では我路から人の癖を真似ることを指摘され、「小さい整君は、誰の気をひきたかったんだろうね」と言われる。そんな我路から人の腕が送られてきたときの整は、恐怖のあまり小さく丸まりながら「もう子供じゃないんだからダンゴムシになっちゃだめ」と自分に言い聞かせる。4話では、母との関係が原因となって爆弾を仕掛けた犯人(柄本佑)を見送ったあと、「ごめんね、お母さん何も感じないの。あなたを可愛がってあげたいんだけど」という母の言葉を思い出している。
どうやら整と両親との関係性は、決して良好とは言えないものだったらしい。だからこそ、子どもが会いに来ない患者の話を聞いて「子供がそういう態度をとる場合、たいてい大人の方が先にひどいことをしています」と言うのだろう。そして放火事件について下戸に問われたときも「火事に興味はないですけど、もし虐待がらみだとしたらそこは気になります」と言う。
虐待された子供たちが火を模したマークを描くと、天使がやってきて親を焼き殺してくれるという都市伝説。それを実行しているらしい香音人(早乙女太一)と下戸。ラストで下戸に襲われ、虐待をしている親とともに始末されそうになる整は、無事真相に辿り着けるだろうか。そしてまた、自分の過去を振り返らざるを得なくなるのだろうか。
“知らない人”と築く関係性
初対面でぶつかってきて「土下座しろ」と言った下戸に整は「土下座でいいんですか?」と言う。「だって土下座ってただの動作だから。簡単でお金もかからなくて心がこもってなくても別なこと考えててもできることなんですけど」「土下座に意味があると思うということは、あなたはそうしろと言われるのがすごく嫌なんだということですね」。形式的にでも屈服を見たがる人がいること、その意味のなさを伝える、原作でも印象的だったシーンが残っていたのは嬉しかった。
6話ではほかに、美術展に行ったことのないライカに「じゃあ行きませんか」と言った後の整の表情が印象的だった。整は友達も彼女もいないというけれど、自分を受け入れてくれた人、自分が興味をもった人にはどんどん積極的に関わっていくタイプに見える。
ライカにどう接するか迷いながらも「(ライカが)何者かも知らないし」「知っていることといえば、『自省録』を丸暗記しててそれで指示してくること。午前と午後の3時に待ち合わせを仕掛けてくること。ちやこさんという妹がいて、春まで生きていられないってこと……」。人はこんなに偏ったことしか知らない相手でも、対話を重ねてなにがしかの感情をもち、関係性を築くことができるのだ。
ライカとクリスマスプレゼントを交換する時、整はライカに「印象派展に行ったときに買った」というポストカードを渡していた。封筒に書かれていたロゴは「大阪府立美術館」。バスジャックに遭ったあと、整は我路に勧められるままに大阪まで印象派展を観に行ったらしい。その道中や行った先で事件があったかどうかは、今のところ描かれていない。原作では描かれたこれらの事件がこの先ドラマでも見られるのかも、楽しみにしたい。
脚本: 相沢友子
演出: 松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
出演: 菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、門脇麦 他
原作:『ミステリと言う勿れ』田村由美/小学館(『月刊フラワーズ』連載中)
主題歌: King Gnu『カメレオン』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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