映画や音楽、本はもちろん、配信動画や舞台、TVにラジオ…。1日が24時間じゃ足りないほど、コンテンツが溢れている現代。目利きの人たちが「面白い!」と感じた作品はどんなものなのか。編集部が気になるあの人に、2022年上半期に触れて良かった「マイベストエンタメコンテンツ」を教えてもらいました。音楽の分野を中心に活躍する文筆家・つやちゃんの3選は?
【1】SNSでバズった
『ギャルちょーかわいい』現象
映画や音楽、本はもちろん、配信動画や舞台、TVにラジオ…。1日が24時間じゃ足りないほど、コンテンツが溢れている現代。目利きの人たちが「面白い!」と感じた作品はどんなものなのか。編集部が気になるあの人に、2022年上半期に触れて良かった「マイベストエンタメコンテンツ」を教えてもらいました。音楽の分野を中心に活躍する文筆家・つやちゃんの3選は?
【1】SNSでバズった
『ギャルちょーかわいい』現象
OHAYOがサブスクで配信リリースした楽曲「GAL (feat. Shake Pepper & Yvngboi P)」
Mixed
がTikTokで大バズり。
年始からTikTokを席巻、人気KPOPガールズグループ・aespaまでもが披露し韓国語ver.もバズり一大現象に。Instagramも巻き込んで90’sギャルピースも副次的にリバイバルしましたね。TikTokで昨今の潮流としてあった「曲の1フレーズを効果音的に使うこと(=冒頭の“ギャル”)」「伝えたい本音をさりげなくリリックに代理させること(=“ちょーかわいい”)」、そしてInstagramで重要な「顔を可愛く隠せること(=ギャルピース)」という条件を満たした、必然のヒット。低音が効きつつ弾力あるビートによって言葉の拗音と長音が跳ね、そこにギャルピースによって作られた最大限の奥行きが重なるという立体感が、音楽的・構図的に見事です。
aespaが韓国語ver.を披露し話題に
【2】
アートディレクター
AOI ITOHの作品
valknee『DEVIL IN MY HEAD』のジャケット。Photography / Art Direction : AOI ITOH
いまガールズカルチャーに漂う世界観を大きく二分しているキュート系とゴス系、その両者をある種のフェイク性で煮詰め、自らの愛する表象で埋め尽くす手腕を見せているのがAOI ITOH。サンリオキャラクターや宝塚歌劇からインスピレーションを得た過剰にキュートなキラキラ作品は以前からカルト的人気を得ていますが、今年に入りリリースしたラッパー・valknee作品のアートワークでは鮮やかなタッチで新たなゴス像を打ち立ててみせました。フォトブースやフェイスフィルター等のワークスも魅力的で、ますます目が離せない存在に。
【3】
九段理江の小説
『Schoolgirl』
研究者・荒木優太さんの紹介で作品を知り、作者の九段理江さんとともに三人での鼎談までさせていただいたのですが、言葉の使い方はもちろんのこと設定・構成含め全てに理由と根拠を明確に述べられていたのが印象的でした。「言葉」と「物語」の関係性、その間に走る緊張感という点では、近年読んだ小説の中でも屈指の強度です。上唇と下唇が重なった結果、言葉がまず「音」として発される、その後に「意味」がやってくる……という当たり前の事象を丁寧になぞっていく作業の集積。太宰治『女生徒』を本歌取りした構造の中で言葉が息を吹き返す、芥川賞・三島賞候補作です。
文筆家。音楽を中心に、さまざまなカルチャー領域での論考・エッセイを執筆。雑誌やウェブメディアへの寄稿をはじめ、アーティストのインタビューも多数。著書に『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』(DU BOOKS)。