本にテレビに映画にラジオetc。1日が24時間じゃ足りないほど、この世はおもしろいコンテンツであふれている! 限られた時間の中で、見ておきたい作品って? ginzamagが気になるあの人に、2022年のマイベストを聞いてみた。
2人目は、編集者・ライターで生粋のテレビっ子である綿貫大介さん。エッセイ本を制作するほど、ドラマ好きな綿貫さんの心を動かした2022年ベスト3は?
ライター綿貫大介さんが選ぶ、2022年のベスト日本ドラマ3選
【1】
『エルピス —希望、あるいは災い—』
(2022年10月ドラマ FOD・U-NEXT・Netflixで配信中)
冤罪を扱うということは国家権力への挑戦。それだけですごいことなのに、その正義追求を描く際に制作陣はメディアの原罪さえも晒してくる。こんなにも作り手の決意や覚悟を感じたドラマはないです!組織や社会などにおける「構造」の問題もたくさん出てきましたが、なにより大事なのはドラマを観ただけでわかった気にならないこと。私たちは自ら学び、考え、知ろうとし続けなくてはいけないんだなと本作から教わりました(少なくとも参考文献として挙げられた本は読む必要があると思います)。民放でも骨太な作品が作れると示してくれた、まさに希望の名にふさわしい作品です。
ワケあり3姉妹とおとぼけの母と頑固オヤジによる、THEホームドラマ。大きな事件は起きないけど、共感度の高い日常のあるあるネタや、個性的な登場人物たちの心地よい会話のリズムにどハマりました。冷蔵庫のすみに残った7cmのネギから人生を考えた経験、ありますか?本作を観たら、それができます!基本コメディなのに、急にToxic masculinity(有害な男らしさ/有害な男性性)の描写がでてきたりする緩急もよかった。日々苦しいことも悲しいことも当然あるんだけど、どんなに大変な人生もコメディだと思えたら自分自身も頑張れるかもしれないなと思えた作品です。これは続編希望!
他者に恋愛感情を抱かず、性的にも惹かれない「アロマンティック・アセクシュアル」(アロマアセク)の男女が同居することで始まる物語。既存のラブコメフォーマットをうまく使いながら、今までの連ドラではメインで登場することがなかったアロマアセクの登場人物を描く。これは異性愛ラブコメばかりが放送される日本のドラマ界における大革命だったと思います!主人公たちはパートナーを求め“新しい家族の形”を模索しているけど、ひとりが好きな人や自認に迷っている人など、アロマアセクの中にも多様性があることまで作中で伝えていたことにも、制作陣の誠意が感じられました。
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綿貫 大介
編集者・ライター・テレビっ子。エンタメを中心としたカルチャー分野で編集・執筆するほか、テレビっ子の肩書でも雑誌やWEBで寄稿を多数おこなっている。ドラマエッセイ『ボクたちのドラマシリーズ』などZINEも精力的に制作している。現在、雑誌『Hanako』では「神はテロップに宿る」を連載中。