本にテレビに映画にラジオetc。1日が24時間じゃ足りないほど、この世はおもしろいコンテンツであふれている! 限られた時間の中で、見ておきたい作品って? ginzamagが気になるあの人に、2022年のマイベストを聞いてみた。
3人目は、ドラマやお笑い好きでも知られるゲーム作家、米光一成さん。2022年に触れたベストコンテンツを3つ選ぶなら?
ゲーム作家 米光一成さんが選ぶ、2022年のベストコンテンツ3選
【1】
今村夏子
『とんこつQ&A』(講談社)
とんかつを食べた後に本屋で出合って購入。電車で読み始めたら夢中になり、表題作の最後までホームで読んでしまった。『こちらあみ子』『星の子』の今村夏子の新作。「とんこつ」という名の中華料理屋ではたらきはじめた主人公は、「いらっしゃいませ」と言うことができなかった。が、「書かれている文字」を読むことはできると気づき、作ったのが対応メモの集積であるノート「とんこつQ&A」。ほのぼのおもしろい(電車の中でクスクス笑いながら読んだ。マスクしていたので助かった)世界が、ゆっくりと歪みはじめて何とも言えぬ気持ちを巻き起こす。大傑作。
【2】
きださおり
『ALICE IN THE NIGHT MYSTERY CIRCUS』
日本的イマーシブシアターの傑作。「イマーシブシアター」というのは、観客がじっと座って鑑賞するのではなく物語に関わることができる「演劇+ゲーム」感覚の新ジャンル・エンターテインメント。ニューヨークのマッキトリックホテルでロングランのイマーシブシアター「スリープ・ノー・モア」も話題。『ALICE IN THE NIGHT MYSTERY CIRCUS』は、ラビット・ホールから出てきたアリスについていったり、トランプ兵を手伝ったり、ダンスを覚えたり、楽器を作ったり。閉館した商業ビルの階段を実際に上り下りして、バックヤードや秘密の通路をさまよい、最後に特別なパーティーを作り上げる。作・演出きださおりのステートメント表明作品でもあって、多幸感あふれる体験。
【3】
岡野陽一
『岡野博覧会』
東京03飯塚が天才と呼び、「単独をやるべき」とハコまで押さえ背中を押してようやく実現したクズ芸人岡野陽一の単独ライブ。テレビでは断片すぎて、その哲学までは伝わりづらいクズっぷりをこれでもかと詰め込み、頭からお尻まで糞袋スピリッツ満載、独自ワールド全開で、古典芸能的な感動すら渦巻いていた。NaNoMoRaLによるエンディング曲もすばらし。年1で開催されることを切望する。
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米光一成
1964年生まれ、広島県出身。ゲーム作家。代表作は「ぷよぷよ」「はぁって言うゲーム」「変顔マッチ」等。