広瀬すず×永瀬廉による青春ラブストーリー、『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS火曜よる10時〜)。急接近する空豆(広瀬すず)と爽介(川上洋平)。一方、音(永瀬廉)もコーヒーショップで出会った女性(田辺桃子)とデートに。ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが3話を振り返ります(レビューはネタバレを含みます)。2話のレビューはこちら。
広瀬すず×永瀬廉『夕暮れに、手をつなぐ』3話。捨てられた女と、捨てられない男たち
「拾ってくれる人」との出会いと別れ
浅葱空豆(広瀬すず)は、かつて母に捨てられ、先日婚約者にも捨てられた。だから
「拾ってくれるる人がおりゃあ、それだけで嬉しか」
と、目の前に現れた爽介(川上洋平)に飛びつく。
そもそも、前回から空豆が慣れないマッチングアプリをやってみたり、居心地の悪い婚活パーティーのような集まりに出かけたりしたのは、祖母(茅島成美)のためのエレベーター費用・300万円を賄うためだ(翔太(櫻井海音)が払ってくれればいいのに……)。だから、祖母からの電話にも
「1500万円のいかつい外車でドライブしております」
なんて金額を出して答えたりしている。
プロポーズした空豆に、どうやら恋愛感情はなさそうだ。
それは爽介も同じこと。ニューヨークに残してきた恋人・メアリーとうまく別れられず、日本の恋人として空豆を連れ帰ったらなんとかなるかも? という少女マンガの導入のような考えで「大根を買うように」結婚相手を探していただけなのだ。
しかし、爽介は“捨てられない男”。別れたいはずのメアリーからの電話にもつい出てしまう。メアリーを捨てないまま、空豆も拾うなんて芸当、できるわけはない。空豆と爽介はお互いの本当のところを話し合い、あっという間に関係は解消される。
「そのわりには、楽しすぎた」
という爽介に
「別れるときにそげんこと言う男は好かん」
という空豆。悲しい別れを経験している分、“捨てられ方”を心得ている。相手に少しでも思いを残して別れれば、よりつらくなる。
音は空豆への思いを自覚した?
もう一人、“捨てられない男”がいる。海野音(永瀬廉)だ。コーヒーショップでナンパされた美女(田辺桃子)との初デートの帰り、いきなり金をせがまれるという、サスペンスを通り越してホラーのような展開。しかも「(金額は)出せるだけで」という一番タチの悪い言い方で。そんな詐欺師(と音は呼んでいた)、菅野セイラからの「また電話してもいい?」を受け入れてしまうのだから、音の「捨てられない度」もかなりのものじゃないだろうか。
そんな音が、いざ地元に帰ろうとする空豆を
「帰んなよ」「いろよ」
と引き留めたのが、3話のラストシーン。
互いに嬉しいことはいちばんに報告したい相手で、デート中も相手の姿を探し、相手が他の人といれば落胆し、気を遣うこともなく何でも話せるし、話さないでいることもできる。そんな空豆と音だけれど、相手に対する思いをどれくらい自覚しているかは、まだわからない。このラストを見る限り、音は空豆が祖母から送られた航空券を見て気づいたような気もするけれど、果たして……。
空豆は
「おいはなるべく、思わんことは言わんようにしようち思っちょる」
と、自分の感情に素直でいるタイプだ。だから彼女が音に対して思いを語らないのは、きっとまだ本人が自覚していないからなのだろう。一方、音の感情が視聴者にわからないのは、彼が感情を表に出さないタイプだから。2話で懸命に取り組んでいた地方の温泉のCM音楽が採用にいたっても、ものすごく平熱の「やったー」をこぼすくらい。
「嬉しいんですけど、こういうキャラなんで」と飄々と言う彼。ちょっといいなと思っていたはずの美女に騙されたとわかったときにも怒りを見せなかった。今のところ音がいちばん感情を見せているのは、空豆に対して悪態をつくときのちょっと体重の乗っている感じ、くらいじゃないだろうか。そんな音が感情をむき出しにする日がきっと近い将来やってくるのだと思うと、楽しみだ。
空豆、ファッションの道へ?
東京都の最低賃金、時給1072円で働いてあてもなく結婚相手を探すばかりの空豆に対し、祖母は電話で
「男の人ん懐当てにして結婚するなんてさもしいが!」
と一喝する。そんな空豆が、音の作った曲を聞いて心動かされ、
「幸せにしてもらうことばっか考えとった」
と自分の情けなさに向き合う。2話で
「なにかを作ろうとする人は好かん」
と言っていた空豆だけれど、音の曲によって変化がもたらされたようだ。
爽介とのデート中に街角のショーウィンドウに飾られたドレスに心奪われ、音を連れてわざわざもう一度見に行った空豆。このドレスが、彼女をファッションの道へいざなっていくのだろう。
しかし、3話にして登場した空豆の母らしき女性(松雪泰子)はどうやら、世界的なファッションデザイナーのようだ。もしかしてここから、一条ゆかりの名作マンガ『デザイナー』のように、母娘のデザイナー対決が幕を開けるのだろうか。
脚本:北川悦吏子
演出:金井紘、山内大典、淵上正人
出演:広瀬すず、永瀬廉(King & Prince)、夏木マリ、松本若菜 他
プロデュース:植田博樹、関川友理、橋本芙美、久松大地
主題歌:ヨルシカ『アルジャーノン』
エンディング曲:King & Prince『Life goes on』
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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