『ホワイトラビット』
伊坂幸太郎
新潮社 ¥1,400
怪しげなベンチャー企業で働く兎田はある日、新妻を誘拐される。引き渡しの条件は、オリオン座に薀蓄が深い“オリオオリオ”を探し出すこと。致命的な誤算から人質立てこもり事件を起こした彼は、同時刻に空き巣に入っていた黒澤と出くわす。SITが出動し、マスコミも報道を始める。逃亡不可能な状況下、やがて事態は思わぬ方向に……。〈すでに起きてる出来事も、時間がずれないと見えないわけだ〉。伊坂流レトリック健在、最新書き下ろしミステリー。
『編集ども集まれ!』
藤野千夜
双葉社 ¥1,700
1985年、J保町の漫画編集部に配属された小笹一夫。石ノ森章太郎や岡崎京子らとの交流など、充実した毎日を送っていた。次第に女性の格好をするようになった彼。同僚は「笹子」と呼び親しんでいたが、会社側は寛容でなく……。〈君はさ、女性として生きていく、っていうことでいいんだよね〉。22年後、小説誌からの依頼を受け、久しぶりに町を訪ねた笹子。蘇るのは、甘やかでありつつも葛藤のにじむ日々だった。芥川賞作家のデビュー前と今を綴る自伝的小説。
『砂上』
桜木紫乃
KADOKAWA ¥1,500
元夫からの慰謝料と月数万円のアルバイト代をもとに、北海道で細々と暮らす令央。小説家の夢は叶わぬまま、気づけば40代に突入。ある日、編集者・小川との出会いを機に、母が墓場まで持っていった秘密と向き合う決心をする。〈嘘ということにして書かないといけない現実がありますから〉。執筆欲にとり憑かれるほど曖昧になっていく虚構と事実の境界。物語の本質を掬いとる視点。ひとりの人間が作家になっていく過程を描いた、デビュー10周年記念作品。