果てしない砂漠の中で起こる映画のような逃走劇。ドラマを愛するライター釣木文恵と漫画家オカヤイヅミが、放送された日曜劇場『VIVANT』(TBS日曜夜9時〜)1話(108分の拡大版)を振り返ります。
考察『VIVANT』わくわくが止まらない1話
日本ドラマ史上破格も破格の108分、気持ちよいドラムの有能さ!

考察『VIVANT』1話
『西部警察』か
『RRR』か
なんだこの見応えは! 日曜劇場『VIVANT』、超拡大版108分の第1話には、大作映画を丸ごと1本見終えたほどの充実感があった。
『君たちはどう生きるか』よろしく、事前に情報がほとんど明かされない状態ではじまったドラマ『VIVANT』。冒頭しばらくは、乃木憂助(堺雅人)の担当した仕事で「振込額が1桁違う」という描写。1億ドルもの損失を1ヶ月以内に取り戻せなければサラリーマン人生が完全に終わるという内容には、「このまま『半沢直樹』のような物語が展開するのかな?」と思った。きっとそれでも、ある程度は楽しめたかもしれない。小日向文世や橋本さとし、迫田孝也に市川猿弥といった“顔力”のある面々は誰が何を企んでいてもおかしくない。けれど、このドラマのスケールは日本の一企業の内紛にとどまるものではなかった。乃木が取引先のあるバルカ共和国にわたってからがとんでもなかった。
モンゴルロケによる広大な砂漠風景の圧倒的な説得力。自爆テロ後の病院の騒然とした雰囲気。乃木たちが馬で走り抜ける緑の、ヤギの群れの、あるいは首都の景色。70年代の刑事ドラマ『西部警察』か? と思うほどの車の潰しっぷり。追っ手から逃れる息つく間もない展開と豪快さには『RRR』を思い出しもする。そしてクライマックスの、道路と大使館とのたった一本の境界線を挟んで乃木を奪い合うシーンの緊迫感!!
日曜劇場といえば、の福澤克雄が演出のみならず原作を手掛け、こちらも『半沢直樹』『下町ロケット』などで知られる八津弘幸が脚本。彼らがこれまで培ってきたものを全部注ぎ込むような、これまでの日曜劇場の中でも、というか日本のドラマの中でも破格も破格の1話だった。
Edit: Yukiko Arai