ボーダーレスでジャンルレス。そんな2020年代を軽やかに体現する才能やムーブメントが次々に登場している音楽シーン。国外シーンの動向を気鋭のライター、つやちゃんのセレクトでご紹介。
台頭するシスターフッドでつながるバンド
ミュージシャン新勢力vol.03
ロックバンドは、長らく“男の子”を中心とした世界だった。近年では少しずつジェンダーや人種の多様化が進みつつも、ロック系フェスのラインナップがいまだ男性アクト主流であるのに変わりはない。それでも今年のUSシーンを揺るがしたのがboygeniusの傑作『the record』だったように、フィメール・バンドの存在感がいまだかつてなく高まっている。彼女たちやThe Acesが男物のスーツを着て撮影に臨む、そのアイロニーも痛快!
ジ・エイシズ
The Aces
小学校からの友達4人で結成されたThe Aces。メンバーの中にはアリサとクリスタルのラミレス姉妹もいて、4人の絆の確かさが彼女たちのバンド活動における強みになっている。屈託なく弾けるオルタナティヴ・ポップ・サウンドは、6月リリースの最新作『I’ve Loved You For So Long』にも見られる。11月には待望の初来日公演を予定。
ハイム
Haim
エスティ、ダニエル、アラナのハイム三姉妹によってロサンゼルスで結成。息のあったハーモニーを生かしたポップ・ロック・サウンドで一躍時のバンドとなった彼女たちは、直近10年のUSバンドシーンにおけるシスターフッドを象徴する存在だ。映画『リコリス・ピザ』にも出演し、女優としての活動も記憶に新しい。
ムーナ
Muna
ロサンゼルスを拠点に活動する3ピース・バンド。フィービー・ブリジャーズが主宰するレーベル「Saddest Factory」からのリリースとなった22年の最新作『Muna』で新境地を開拓。彼女たちらしい爽快感あふれるシンセポップ・サウンドはそのままに、失恋のほろ苦さやクィアな感情の機微が刻まれた重層的な仕上がりになった。
ボーイジーニアス
boygenius
ジュリアン・ベイカー、フィービー・ブリジャーズ、ルーシー・ダカスによって2018年に結成。ソロで活躍していた彼女たちの合流は、新時代の「スーパー・グループ」の在り方を印象づけた。デビュー・アルバム『the record』は2023年屈指の名盤との呼び声も高い。女性バンドに対する長年の偏見を払拭したゲームチェンジャー。
Text: Shino Kokawa Cooperation: Tsuyachan