《Four Thousand Weeks》 2022 Photo by Keizo Kioku Courtesy of MISA SHIN GALLERY
2024年3月30日(土)〜6月9日(日)、「茅ヶ崎市美術館」にてアーティスト・フランシス真悟の初の大規模個展が開かれる。幻想的な色使いの抽象絵画が並び、「絵画を観る」という経験の本質を問う。
絵画から始まる空間と色彩への冒険
《Four Thousand Weeks》 2022 Photo by Keizo Kioku Courtesy of MISA SHIN GALLERY
2024年3月30日(土)〜6月9日(日)、「茅ヶ崎市美術館」にてアーティスト・フランシス真悟の初の大規模個展が開かれる。幻想的な色使いの抽象絵画が並び、「絵画を観る」という経験の本質を問う。
鎌倉とLAを拠点とするフランシス真悟の代表作として知られるのは、「Interference」シリーズ。丸や四角といったシンプルな図像が、スペクトルを映したような色合いで表現される。ここには光を反射する特殊な顔料が塗り重ねられていて、作品は見る角度によって様々に表情を変える。2023年には「銀座メゾンエルメス フォーラム」にてこのシリーズに焦点を当てた展覧会が開かれ、大きな反響を呼んだ。
フランシスが育ったのは、カルフォルニアと日本。その作品にはバイカルチュラルな知的背景が通底している。たとえば、光やそのうつろいへの関心は、谷崎潤一郎の文章にも影響されたという。また、同じくカルフォニア出身の芸術家ジェームズ・タレル。日本的な陰翳へのアプローチを西海岸で実験した作家でもある。鑑賞者の知覚そのものに問いを投げかける手法を、フランシスはこうした先達の作品からも着想。そこから、絵画という平面的かつ非言語的なかたちでラディカルに、色と光そしてそれらが作り出す空間への冒険を試みている。
芸術の道を志し始めた頃、フランシスはフィレンツェにわたった。そこで西洋絵画の古典的名作の模写を重ねていたところ、アメリカの抽象表現主義運動の一員でもあった画家ジョアン・ミッチェルの薫陶を受ける。現在彼の作品を特徴づけているのは、線や図像の上での色彩の探求だろう。一見すると平面によるクリエイションだが、実はキャンバスという装置によって、そこにある空間を意識させようとしている。絵画は「間」に対峙する存在で、見る者の感覚を反映する媒体として設置されているのだ。また、絵の具を重ねていくことで、平面の中に奥行きや広がりを与えている。こうした営みは、フォルムや風景や遠近を「場」に創出させようとしてきた、絵画の長い歴史に確かに連なっている。
吸い込まれそうな色彩があると思えば、光の当たり方で色そのものが変わっていく絵もある。フランシスの作品世界に没入するほどに、自分の心が映し出されるような気がしてくる。
会期_2024年3月30日(土)〜6月9日(日)
会場_茅ヶ崎市美術館
住所_神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45
Tel_0467-88-1177
開館時間_10:00〜17:00(入館は〜16:30)
*4月29日、5月6日をのぞく月曜休館。
*4月30日(火)、5月7日(火)休館。
観覧料_一般800円、大学生600円、市内在住65歳以上400円、高校生以下無料
Text_Motoko KUROKI