2024年5月30日(木)から9月6日(金)まで、「麻布台ヒルズ ギャラリー」にて『カルダー:そよぐ、感じる、日本』が開催される。アレクサンダー・カルダーは「モビール」の発明で知られる芸術家。その作品世界と日本の伝統的美意識との共鳴をテーマに、約80点の作品が集う。
アレクサンダー・カルダーの個展が「麻布台ヒルズ ギャラリー」で開催
展覧会『カルダー:そよぐ、感じる、日本』にて作品約80点が集結
支点からオブジェやパーツがぶら下がり、ゆらゆらと動く。マルセル・デュシャンはアレクサンダー・カルダーのそうした作品を見て、「モビール」と名付けた。1931年のことだ。
1898年生まれのカルダーは、米国でアーティストの両親のもとで育ち、高校卒業後は工科大学に進む。1926年にはパリへ移住。針金を曲げたりねじったりして造形していく手法を発明する。それは空間の中に立体を生み出すという、新しいかたちの彫刻だった。そこから興味は抽象的な構成にも向かい、吊るされた要素が揺れながら絶えず構図を変える作品群を生み出した。当初はモーターなどを使用していたカルダーだが、次第に気流や光、湿度といった自然な環境要因にのみ反応する作りにシフトしていく。この斬新なアートに、デュシャンは仏語で「動き」と「動因」を意味する「モビール」の語を当てはめたのだ。
カルダーはモビール以外の制作にも精力的に取り組み、要素が静止して並ぶ抽象作品も残している。これらは、ジャン・アルプによって「スタビル」と呼ばれた。そしてキャリアを重ねるにつれ、鉄板を組み合わせて作る大きな屋外彫刻にも注力するようになる。
本展では、モビールやスタビルのほか絵画やドローイングなど約80点が並べられる。東京では35年ぶりとなる個展開催に際し、テーマとされたのは日本的美意識との共鳴。作家自身に来日経験はないものの、作品に見られる不均衡性や非対称性、不完全さによって完成を目指す姿勢には、日本の伝統文化と通底するものがある。
会期中6月11日(火)には、カルダーの日本のアート・カルチャーへの影響を題目にトークイベントも開催。美術評論家・詩人の建畠晢、文化研究者の山本浩貴が登壇し、『カーサ ブルータス』編集長の西尾洋一をモデレーターとして、日米の文化の関係性が紐解かれる。
また、開催初日の5月30日(木)以降入館者先着500名には、限定ステッカー贈呈があるとのこと。身近な動物をとらえた躍動感に溢れるドローイングが3種と、展覧会ロゴを載せたもの1種の計4種のどれかが配られる。
近代彫刻の概念を一変させ、不均衡や非対称から美を探ったカルダー。モダニズムの歴史において重要なターニングポイントを作った芸術家の世界を、日本文化との共通点を探しながら鑑賞してみたい。
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【カルダー:そよぐ、感じる、日本】
会期_2024年5月30日(木)〜9月6日(金)
※2024年6月4日(火)、2024年7月2日(火)、2024年8月6日(火)休館。
会場_麻布台ヒルズ ギャラリー
住所_東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
時間_10:00〜18:00(最終入館は閉館30分前。金・土・祝前日は〜19:00)
チケット_前売り一般1,100円、専門・大学生1,000円、高校生800円 *販売期間は5月29日(水)まで。
通常一般1,500(*ウェブ予約1,300円)、通常専門・大学生1,200円(*同1,000円)、高校生1,000円(*同800円)
*中学生以下無料
問い合わせ_azabudaihillsgallery@mori.co.jp
【トークイベント「アレクサンダー・カルダー:日本のアート・カルチャーへの影響」】
日時_2024年6月11日(火)18:00〜19:30
会場_麻布ヒルズ ギャラリー カフェ
料金_3,000円(本店鑑賞チケット及び軽食とドリンク代を含む。)
定員_30名
申し込み_https://www.hills-ticket.com/AHG/order/Calder_talkevent
Text_Motoko KUROKI
All works by Alexander Calder All photos courtesy of Calder Foundation, New York / Art Resource, New York © 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society (ARS), New York