綾瀬はるかが、孤独死を恐れ、「迷惑をかけずにひとりで死ぬ」ことを目指す39歳独身女性を演じる土曜ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK毎週土曜よる10時〜 再放送/火曜深夜0時35分〜)3話(全6話)までを、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
綾瀬はるかが独身女性を引っ張るドラマ『ひとりでしにたい』
深刻ではあるが、しんどくなりすぎない絶妙な脚本、演技の力

考察『ひとりでしにたい』前編
大森美香×綾瀬はるかが
明るく「終活」を描く
2020年の国勢調査によれば、単身世帯は全国で約4割、東京都では5割を超える。「家族」という単位に匹敵するほど、「ひとり」はいま増えているのだ。
『ひとりでしにたい』は39歳独身、学芸員として忙しく働き、ひとり暮らし用のマンションを購入して独身生活を謳歌していた山口鳴海(綾瀬はるか)が、かつて憧れていた伯母の孤独死をきっかけに終活と向き合う物語。第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したカレー沢薫による同名のマンガを原作とし、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021)などの大森美香が脚本を務めている。
第1話冒頭で訪れるこの伯母・光子(山口紗弥加)の孤独死がまたかなり無惨な死に様で、ドラマの初っ端から暗澹たる気持ちにさせられる。親戚である鳴海の両親に疎まれ、近所の人たちに噂される伯母の死。発見された状況のむごさもさることながら、死後に周りに迷惑をかけ、さらにはトラウマをも植えつけてしまうことのいたたまれなさの方がむしろ刺さる。
この出来事にショックを受けて自分のこれからを考える鳴海ももちろん深刻そうだ。だが、その振る舞いや考えの巡らせ方にコミカルさが宿っているので、観ていてしんどくなりすぎない。他にも、2話で両親のうち片方が残った際の負担について思いを巡らせた鳴海が「お願いだからお父さんが先に死んで」と願うシーンは、文字面だけ見れば「なんて不謹慎な!」となりそうなところだが、実際に作品を観ていると、共感とともについ笑ってしまう。このテイストは原作から受け継がれたもの。原作の要素を、内容からカラーに至るまで過不足なく詰め込みつつ、ドラマとして見応えあるものにしているのはやはり大森の手腕だろう。そして、真剣・深刻な内容とコミカルさとを両立させるのは、綾瀬はるかという俳優が得意とするところでもある。思えば18年前、『ホタルノヒカリ』(日本テレビ 2007)で恋愛に無関心で、家でぐだぐだ過ごすことを愛する「干物女」を演じて一世を風靡した綾瀬。当時20代だった彼女は今年40歳を迎え、「現役世代の終活」をリードする存在になっているのだ。
Edit_Yukiko Arai