No.342 / 2025年11月12日発売

MAGAZINE

もの作りを促す「WORKSHOP」で目指すものとは？

〈A.P.C.〉で自分だけのバッグチャーム作りを体験

PROMOTION

クリエイティブ集団「YAR」によるインスタレーションが「GINZA SIX」に出現

Nujabesの楽曲にインスピレーションを得たクリスマス

Nujabes　GINZA SIX　YAR クリスマス

インテリアのヒントは「Build Your Christmas」に！

レゴ®ブランドで始めるクリスマスデコレーション

この冬に贈るもの、決めた？

〈バルミューダ〉のギフト、ふたりのホリデー。

Light WING

本田翼が着る〈TATRAS〉のダウン

ホリデーを彩るジュエリー＆ウォッチ　

INI 木村柾哉が纏う〈エンポリオ アルマーニ〉

冬を彩る輝くピース

〈ハリー・ウィンストン〉ジンジャーブレッドマンとめぐるジュエリーハント

TU-ハリーウィンストン メイン ジンジャーブレッドマンのクリスマス旅

ALWAYS ON YOUR SIDE

〈バレンシアガ〉進化するアイコンバッグ

MEET THE NEW SCENT

〈N.〉の新しい香りで髪と心にときめきを

波紋の記憶

小松菜奈 in KYOTO for CHANEL

臼田あさ美と、国内最大の〈アークテリクス〉新店へ！

アークテリクス池袋店_臼田あさ美

LIFESTYLE

ドラマの人気を後押しする衣装を深掘り ＜俳優編＞

INTERVIEW

GINZA編集部の、これ欲しい！

G's CHARM

この1軒が旅の目的になる

FOOD

「花咲かせてあげる」桜介（ディーン・フジオカ）の素敵な能力が暴走？

『ちょっとだけエスパー』6話イメージイラスト／まつもとりえこ（イラストでも全話振り返ります）

CULTURE

長〜い行列、その先にあるものは？

FASHION

家入レオ「言葉は目に見えないファッション」

「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。

平松洋子「小さな料理 大きな味」

小さな料理　大きな味

私と部屋

スニーカー愛が止まらない！

毎日22時に更新。タロット使いのJON（犬）が、あなたのために毎日リーディング。その日の「対策」を星座別にお伝えします。

JON（犬）の毎日占い「 今日を過ごすヒント」

占い師章月綾乃さんによる、12星座別月間占い。星の声に耳を澄ませれば、過ごし方のヒントが見えてくる！ あなたの現在地点と今月の運勢は？

章月綾乃「開運レター占い」

トップスドッグズ

臼田あさ美、のせりんと歩く初秋の陣馬山⛰️

ASAMI THE MOUNTAIN vol.3

この秋冬こそ、定番をアップデート！

10月号発売中📕

特別編集ムック

Tシャツに似合う
夏のヘアアレンジ

🎥 MOVIE

〈Louis Vuitton〉
穂志もえか、旅路の途中

GINZA4月号

No.338 / 2025年7月11日発売

『私たちが光と想うすべて』場面写真

インドとひと口に言っても、例えば地域によって言葉が違う。主人公のプラバにはドイツで働く夫がいる。彼とは音信不通の一方、職場の病院では同僚のドクターがなにかと気遣ってくれる。二人は共にムンバイに出てきた者同士だ。この地の言葉遣いに慣れないドクターに、プラバはこう言えばいいのだと教える。それ以上、距離が縮まることがないのはプラバの生真面目さゆえだ。また、インドには文化の違いもある。プラバの同僚でルームメイトのアヌには秘密の恋人がいる。「秘密」なのは、彼が異教徒だから。二人は親密だけど、親に結婚を許してもらえないだろう……。こうしたエピソードを美しい映像と共に見せてくれる『私たちが光と想うすべて』は、インドの現代社会を通して、ならではのロマンを感じさせてくれる。

本作を手掛けたパヤル・カパーリヤー監督は「故郷を離れ大都市で働く女性たちと、その友情を描きたかった」という。「インドでは家族の役割が明確に定義されているんです。父はこういうもので、母はこういうもので、と。その役割は、女性に大きな影響を与えています。その点、友情はより自由でひらけている関係性です。伝統的で確立した家族とは違う、人のつながりを模索したいと本作を作りました」。この物語の舞台が、インド有数の大都市ムンバイであることも欠かせない要素だ。より伝統を重んじる傾向がある地方に比べて、都市は自由に過ごせる。言語も違えば文化も違う、いろいろな人が集まる土地だからこそプライバシーを手に入れることができるのだ。ヒンドゥー教の社会階層制度カースト制度でさえ、その拘束力は弱まるのだという。「そうはいっても、まだまだ女性は縛られていると思います。ドイツで暮らすプラバの夫は、不在のままプラバを拘束しているとも言えるはずです。そして海外赴任する夫がいる、という夫婦関係は決して珍しいことではありません。彼女のような存在がどうすれば自由を獲得できるか？ということも描きたいテーマのひとつでした」

このように伝統から離れて自由を描く本作は、インド国内でどのように受け入れられたのだろう？「オンラインスクリーニングをはじめ、ムンバイはもちろん、ニューデリー、コルカタ、バンガロールなど大都市で上映ができました。もちろんボリウッドほどの規模ではないですけどね。プラバとアヌを演じた二人の故郷であるケララ州では、映画好きが多いこともあって2度にわたり長期間上映する機会がありました。もちろん批判もありましたが、本作を機に対話が広がればうれしいです」
そして「こうしたテーマの作品は、私に始まったわけではないんです」とも。「サタジット・レイやリッティク・ゴトクは偉大な先輩です。ヤシャスウィーニ・ラグナンダンやエクタ・ミッタルは素晴らしいドキュメンタリー作家。二人は山形国際ドキュメンタリー映画祭にも作品を発表しています。また、新作だと『Cactus Pear』をおすすめします。日本でも公開されるといいですね」。ロマンティック・インディアの世界はなかなか深い。

『私たちが光と想うすべて』

2024年／パヤル・カパーリヤー／118分 
ムンバイで看護師として働くプラバと、同僚でルームメイトのアヌの日々を描く。2024年のカンヌ国際映画祭で、インド映画として初めてグランプリを受賞。審査委員長はグレタ・ガーウィグ。7月25日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかで公開。

パヤル・カパーリヤー監督ポートレート

Payal Kapadia

パヤル・カパーリヤー&gt;&gt; 1986年生まれ、インド・ムンバイ出身。インドで映画の演出を学び、2015年に短編ドキュメンタリーを発表。手掛けた長編作品に、ドキュメンタリー『何も知らない夜』（21）や劇映画『私たちが光と想うすべて』などがある。
©Ranabir Das

19世紀のコルカタで優雅に暮らす、 
チャルラータの孤独と心の交流
1880年、イギリス植民地下にあるコルカタを舞台にしたドラマ。多忙な夫を持つ妻チャルラータは、文学をとおして夫の従弟と仲を深めていく。ラストシーンのフリーズフレームまで見どころいっぱい。原作はタゴールの小説『The Broken Nest』。ウェス・アンダーソンもお気に入り。

まだ愛してくれているなら… 
言葉の奥の、異なる価値観の衝突
脚本家の男は、地方での取材中に車の故障に見舞われるが、偶然出会った茶園経営者に助けてもらえることに。彼の家を訪ねると、かつての恋人コルナが妻として暮らしていた。出発を前に、彼はコルナへ、自分のことをまだ愛しているなら駅に来てほしいと伝えるが……。

伝統と慣習から解き放たれようとする、 
現代につながる社会派ドラマ
1953年のコルカタを舞台に、共働き夫婦の暮らしを描く。妻アロティは、主婦は家にいるべきだという慣習と義父の反対を振り払い、訪問販売員として仕事をはじめる。順調に働き、家計も楽になるが、とある事件を機に辞職することに。独立直後の急激な時代の変化をも感じさせる一作。

パヤル・カパーリヤー監督が一番に名前を挙げてくれた、インドの巨匠サタジット・レイのレトロスペクティブ上映が始まる。その作品を観れば、確かにロマンティック・インディアの系譜は脈々と受け継がれているとわかる。もっと言えば、この系譜はどんどん発展しているのだ。例えば、『チャルラータ』の舞台は1880年のコルカタ。リッチな邸宅に暮らし日々を持て余すチャルラータは、夫の従弟と出会い、静かに心を通わせていく。その約70年後のコルカタを描く『ビッグ・シティ』には、家計を助けるべく訪問販売の仕事をはじめる妻アロティの姿がある。義父には一家の恥だと言われ、夫にも大黒柱としての立場がないと仕事を辞めるように言われてしまうのだが……。そのさらに約70年後となった現在、『私たちが光と想うすべて』では、女性が働くことは物語の前提になっているのだ。そして、時代は違えどメッセージは変わらない。『臆病者』では社会的な負い目から「結婚という大きな決断をする前に、少しだけ時間が欲しい」と語る男に、女性がこう告げ去る。「あなたに足りないのは、時間じゃない。別のものよ」。伝統や社会にとらわれず、個人の自由を求める姿は変わらない。これこそがロマンティック・インディアなのだ。

サタジット・レイ監督ポートレート

Satyajit Ray

サタジット・レイ&gt;&gt; 1921年生まれ、インド・コルカタ出身。映画監督、脚本家ほか、作曲家、小説家、カリグラファーなど多彩な顔を持つ。アジア人初のノーベル文学賞受賞者タゴールが創設した大学などで学び、彼と親交を持った。手掛けた映画は30本以上にのぼる。
©Tamaki MATSUOKA

サタジット・レイ レトロスペクティブ2025

インドの巨匠サタジット・レイの特集上映。『音楽サロン』『臆病者』をはじめとする日本劇場初公開作や、ベルリン国際映画祭受賞作『ビッグ・シティ』『チャルラータ』など、全7作をデジタルリマスター版で上映する。7月25日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかで順次開催予定。

新たなインドが見える映画作品。ロマンティック・インディアに酔いしれて

インド映画の新風を感じる
繊細な描写と女性像

映画好きの心を動かした227作品。GINZA 8月号「私たちには映画がある」

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