焼きものやガラス、木工に金属にテキスタイルまで。昨今、手仕事のオブジェや工芸品を部屋に飾る人が増えている。同時に、フレッシュな感性でクラフトを作る新世代の作家も急増中。彼らは確かな技術をもちつつも、時代に寄り添うセンスと常識をくつがえす発想で、生き生きとしたアイテムを生み出している。そんなクラフトの魅力は、シンプルでも小さくても、存在感があること。リビングの床や窓辺に置くだけで唯一無二の彩りを添えてくれるし、キッチンや本棚にさりげなく飾れば、目に入るたび心が豊かになる。うれしいのは、まだまだ手に入れやすい価格のものも多いこと。GINZAが目利きした若手作家の、チャーミングな作品を紹介しよう。#新しいクラフトを創る23人
飾れば部屋が変わる!新しいクラフトを創る23人 vol.1
茶陶の美しさも継ぐモダンな壺etc.

1 ミノワタカハル
茶陶の美しさも継ぐモダンな壺
表面がこすれて風化したような質感と、うっすら浮かびあがる上品な色。常滑の作家ミノワタカハルによる手びねりの壺は、焼成を何度か繰り返すことで生じる色と質感のグラデーションが特徴だ。釉薬がチリチリと縮れてできた肌合いは、伝統的な茶陶に見られるディテール「梅花皮」のよう。日本古来の美意識も感じさせる作品だけれど、ポップな家具と合わせても意外とハマる。白楽釉壺 H27×W26×D31cm ¥110,000(スペース大原)
2 肥田野優希
佇まいも愛らしい、織りの彫刻
もしゃもしゃしたテクスチャーと愛嬌ある形に目が奪われる。大胆な赤のオブジェは、プリミティブな織りの技法を用いながら、彫刻的なアプローチで作品を生む肥田野優希の新作だ。樹脂と顔料を混ぜた液体で染色した赤い糸と電気コードを使い、手織り機でこの複雑なフォルムを組み上げている。あえて整えていないというエッジや、ぴょんぴょん飛び出すコードの端も愛らしい。Foam Fiber Form φ22×H20cm ¥66,000(ブルーモ)
3 赤平史香
生まれかけの形をもつ陶オブジェ
ファンタジックな色と、小さな生きもののような佇まいがたまらなく可愛らしい。瀬戸の陶芸家、赤平史香のオブジェに、明確なモチーフは無い。手で作ったフォルムは、自身の記憶や心の動きからこぼれおちた、いわば輪郭をもつ以前の「生まれかけの形」。美しい色と質感は、焼成後、周りの空気と反応して生まれたもの。光がきれいな場所に飾り、表情の変化を楽しみたい。わたしはふたごのたましい 約φ24×H11cm ¥38,500(マトヤ)
4 中井波花
常識を再構築した新時代の焼きもの
薄いリボンみたいにシンプルなのに、部屋に飾れば主役級の存在感を放つ。それはこのオブジェが「焼きもの」だからだろう。作り手は陶芸家の中井波花。自らの手で薄く引き伸ばした土を、曲げたり巻いたりしてダイナミックな作品を作っている。特徴は、陶芸特有のゆがみやひび割れも生かすこと。本作の表面にも、味わい深い釉薬のムラや手びねりの跡が残っている。Is it orange? Landing H19×W22×D11.5cm ¥220,000(TARO NASU)
5 安藤里実
プラチナを焼き付けたガラスの壁掛け
立体を壁に飾ると、部屋にリズムが生まれる。ミラーのように周囲を映すオブジェなら、眺める楽しさも増すはずだ。ガラス作家の安藤里実が作るのは、波打つガラスの表面にプラチナを焼き付けた壁掛け。有機的なフォルムは、高温で溶かしたガラスを棹に巻き付けて成形する“宙吹きガラス”によるものだ。ゆらぎのある美しさにもぐっとくる。Temperature Surface 右_H12.5×厚み8cm ¥39,600/左_H18.5×厚み10.5cm ¥60,500(共にボイス)
Photo_Ryuichi Adachi Styling_Yumi Nakata Text_Masae Wako
