いまだファッション・アイコンであり続ける映画『ポリー・マグーお前は誰だ?』、そして数々のファッション写真などで私たちを魅了し続ける写真家、ウィリアム・クライン。
彼の名前を世界に知らしめた写真集『ニューヨーク』をはじめ、パリ、ローマ、モスクワ、東京と、クラインのカメラはつねに都市とそこに生きる人々に向けられてきた。
六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催中の展覧会では、そんなクラインが撮影してきた都市と、そのスピリットを受け継ぐ新世代の若い写真家たちの作品が楽しめる。
ウィリアム・クライン「Atom Bomb Sky, New York 1955」
展示は、クラインのこれまでの作品をさまざまなジャンルからセレクトして集めたインスタレーションと、愛用のカメラが一堂に会したイントロダクションから始まる。
ウィリアム・クライン「Models, backstage from the movie “Who are you, Polly Maggoo ? (1966)”」
そして続く巨大な空間には、映像作家TAKCOMがクラインのこれまでの作品や映画のスチル写真から約200点を選び新たに作り上げたマルチ・プロジェクションが。印象的なタイポグラフィとともに、くるくると変わっていく写真の数々に圧倒される。まさに都市の躍動を体感できる、ワクワクする空間になっている。
ウィリアム・クライン + TAKCOM「ウィリアム・クライン + TAKCOM, 2018」 撮影:吉村昌也
めくるめく変化を続ける都市の生き生きとした姿には、必ずといっていいほど怒り、笑い、声をあげるエネルギーに満ちた若者の姿がある。20世紀後半の都市が、ユースカルチャーとともに成長してきた証を見るようだ。
ウィリアム・クライン「Le Petit Magot, November 11th, Paris 1968」
第2部は22世紀を生きる写真家たちと題した、次世代のアーティスト10組による展示。
なかでも面白かったのは、台湾の写真家、沈 昭良の「STAGE」。台湾の夜の名物である、大型トラックによる移動式ステージの数々を撮影したこのシリーズ、夜の街にきらびやかな電飾に彩られたステージが浮かび上がる様子は、台湾の風景なのに、どこか日本の夏祭りの様子も思い出させて懐かしい。
写真家の石川直樹とサウンドアーティストの森永泰弘のコラボによるインスタレーション「極地都市」は、極地と呼ばれる場所の人々や動物の営みを捉えた写真をその場でフィールドレコーディングした音とともに表現。極地の風景は、作品のテーマである「惑星の光と声」のとおり、地球というより大きな感覚を抱かせてくれる。
石川直樹+森永泰弘「極地都市」 撮影:吉村昌也
また、新進写真家の朴ミナは、水族館の巨大な水槽に見入る人々を写し出したシリーズを展示。暗い場所に置かれた大きく伸ばしたブルーの写真は、水の流れる音などのサウンドもあいまって、とても幻想的。
朴 ミナ「ブルーの形態」
このほかにもたくさんの作品が展示されていて、ここではとても紹介しきれない。いずれも、写真家が切り取る「都市」の在り方そのものを考えさせてくれるものばかり。ぜひ会場で、あなたなりの「写真都市」を体験してみて。
21_21 DESIGN SIGHT 企画展
「写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち-」
会期:2018年2月23日(金)- 6月10日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
休館日:火曜日(5月1日は開館)
開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
*六本木アートナイト特別開館時間:5月26日(土)10:00-23:30(入場は23:00まで)
入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料