〈ホルストン〉〈ロシャス〉〈スキャパレリ〉など名だたるデザインハウスで経験を積んだデザイナー、マルコ ザニーニ(Marco Zanini)。2019年秋冬に立ち上げた自身のブランド〈ZANINI〉では、それまでのキャリアでは追求できなかった細部にわたる服づくりからルックブックの撮影に至るまで自身で行っている。上質な服を提案する〈ZANINI〉が今冬、〈ARTS&SCIENCE〉と初のコラボレーションコレクションを発表。ローンチを記念して来日したザニーニ氏にginzamag.comがインタビュー。
ロシャスやスキャパレリで経験を積んだ〈ZANINI〉が〈ARTS&SCIENCE〉とコラボ

「洗練されていて、“ほんとうに良いもの”を知っている。誰かに見せびらかすためではなく、自分のための洋服に身を包んでいる。みんなが思う“かわいい”に適合するのではなく、個性を主張し、自信に満ち溢れている」
〈ZANINI〉の女性像について聞くと、「定義しすぎたくはないんだけど…」という言葉と共に、そんな答えが返ってきた。自分の“好き”を知っている女性へ向けてデザインするザニーニ氏が〈ARTS&SCIENCE、以下A&S〉と共鳴するのはごく自然なことだったのだ。
ザニーニ氏がA&Sのファンとなったきっかけは、ブランドを立ち上げるずっと前のこと。パリファッションウィーク期間中に、A&Sが市内に出店していたポップアップストアを訪れた時だった。
「(A&Sのオーナー兼クリエイティブディレクターを務める)ソニア パークの上質なもの・美しいものへの鋭い視点や編集力に、すぐに魅了されました。初めて東京に来た際には、真っ先に青山のお店に足を運んだほど! だから、〈ZANINI〉を始めるにあたり、ぜひ扱って欲しかった。最初のコレクションが出来上がってすぐソニアに見てもらい、幸運なことにファーストコレクションから置いてもらっています。ブランドにとっては最初のカスタマーでもあり、年月が経つにつれて、よりお互いへの理解や尊敬も大きくなっていったと感じています」
この特別な関係性は今季、〈ZANINI with ARTS&SCIENCE〉というスペシャルなコレクションへと発展。〈ZANINI〉では生地製造から一貫してイタリアで行っているが、Made In Japanのものづくりを行うA&Sとコラボした本コレクションは、一部〈ZANINI〉の生地やボタンを用いながら日本で生産された。
「最初は、ソニアのアイデアから始まりました。“こんなことができたらいいね”なんて話しながら、自然と進んでいきました。制作の過程はとても楽しくクリエイティブで、仕事という感じがしなかったほど(笑)。A&Sはショップもあるから、私にはない視点を持ち合わせていて、とても勉強になりました。〈ZANINI〉はクオリティに重きをおいていますが、日本人は上質なものをよく理解している。だから、日本での生産は全く難しくありませんでした。元々日本の文化には憧れがあったので、今回は夢が叶ったよう!」
このコレクションは面白いことに、次の3つのカテゴリから構成されている。
① ZANINIの生地を用いてA&Sのパターンで製作されたアイテム
② A&Sの生地を用いてZANINIのパターンで製作されたアイテム
③ ZANINIの生地とパターンを用いて製作されたアイテム
「今回のコラボレーションは、ザニーニが主役ではないのです。エゴを出すことなく、ZANINIとA&Sがお互いの視点を持ち寄って一緒にものづくりをしてみたら、というプロジェクト。その想いは、〈ZANINI with ARTS&SCIENCE〉というコレクション名にも表れているはず」
生地もパターンも〈ZANINI〉のものを使用する③は、通常のコレクションとはどう違う?
「A&Sの視点が入っているから、プロポーションをちょっと調整していたりするんです。つまり、ザニーニのパターンを日本向けに磨き上げた、と思ってもらえたら!」
コレクションは、11月18日(金)よりA&S 青山で展開を開始。楽しい共同作業から生まれた良質なアイテムは、ぜひ店頭で確認してみてほしい。