モノトーンが映えるアイテムは、いつの時代も装いの要になる大切な存在。今シーズンはいつもよりバリエーション豊かにラインナップされている模様。ベーシックカラーに起きている静かな革命を4つのアイテムから確認しよう。
ベーシックな白シャツの静かな革命
白シャツ、黒ジャケット、ときどき黒ネクタイ vol.01

デザイナーのシャルル・セブリンはパリのメゾンを経て自らの名前を冠したシャツブランドを2019年にスタート。クラシカルなメンズ仕立てを得意とし、タキシードに組むような胸元の切り替え部のビブフロントがアイコン。ボタンを隠す比翼仕立てや長めのカフスなど、手の込んだディテールと丁寧なテーラリングが調和し、洗いざらしの袖をロールアップして着るスタイルも提唱する本格派。バンドカラーはてらいのないムードに導いてくれる。ヒップがすっぽり隠れる絶妙な丈感。¥50,600(セブリン | トゥモローランド)

トラッドやワークウェアのたたずまいが持ち味の〈ロエフ〉が目指したのは究極の「普通」。ゆるすぎず細すぎない絶妙なボックスシルエット、オン・オフで兼用しやすいレギュラーカラー、控えめなツヤを帯びた品のいいコットンブロード生地。1枚でも、ニットやジャケットの下に重ねるのにも、実はいちばんヘビロテしてくれるのは、こういうタイプかもしれない。前身頃はあくまですっきりと、バックビューのヨークとボックスプリーツがほどよいアクセントと快適な着心地を叶える。¥38,500(ロエフ | エイチ ビューティー&ユース)

パターンの作り込みに強みを持つ東京ブランド〈スドーク〉のロングシャツは、メンズからスタートしたデザイナーらしいギミックがあちこちに。きちんと合わせても前立てがリボンのように垂れ下がり、わざとかけ違えると胸元にアシメトリーな空間が生まれる。留め方次第で自在にシルエットが変えられるから、体型や気分などによりベストなアレンジを探りたい。うなじがチラリとのぞく後ろ姿にほんのりフェミニニティが漂う。着方はウエストアウトの一択で決まり。¥30,800(スドーク | スドーク カスタマー サポート)

ウエストの共布ベルトを使って、おへそゾーンだけを「窓」のようなカットアウトでのぞかせる。〈トーガ〉の斬新な仕掛けにドッキリ。肌を見せたり、インナーを効果的に際立たせたり、内と外の境界線を溶かす構造をどうコーディネートに活用するか、あれこれ悩むのも楽しい。同時に、ベルトを外してボタンで閉じれば、何事もなかったムードに戻せる2WAYもありがたい。主張たっぷりの大きな襟に加え、張りがしっかりある、シャリっとした素材は、ジャケットとして羽織るのにもぴったり。¥46,200(トーガ | トーガ 原宿店)

テイラーメイドへの敬意を示すデザイナーの靱江千草が2023年春夏に立ち上げた〈バウト〉。定番のボタンダウンは、約100年の歴史を持つスイスのシャツメーカーが、綿花の手摘みから丁寧にサステイナブルに織り上げたオックスフォード素材を採用。ボーイズサイズをレディスに落とし込んだパターンは、ジャストでの着用がおすすめ。形はアイビー、仕立ては英国調の丁寧な運針ステッチにこだわり、襟とカフスは接着芯を使わず自然な形を保つ技術で柔らかな風合いになるフラシ芯。伝わりにくい部分にも本気な作りが。¥44,000(バウト | ボウト)

コンセプトやシーズンテーマを掲げないブランド〈ブラミンク〉。風合いの異なる生地を縫い重ねた、ミルフィーユのような仕上げが繊細な味わいのシャツは、ノーカラーのネックラインのほつれたような切りっぱなし処理がどこかアンニュイな雰囲気。そこにカッチリしたカフスがきちんと感を添えて。両サイドのスリットは深く、伸びやかな裾さばきを実現し、ウエストアウトすれば、落ち感がいっそう引き立つ。明らかな飾り気を抑制しながら、細部へのこだわりがおしゃれ心をくすぐる1枚。¥69,300(ブラミンク)

「完璧なシャツ」を目指して2017年にローンチしたフランスの〈ブリエンヌ〉は、凝ったディテールを随所にあしらったロマンティック調が持ち味。中世の貴婦人を思わせるスタンドカラーは、細かいフリルで縁取られた贅沢な作り。前立てやカフスにはフラワーモチーフの刺繡がたっぷりと施されている。その他にも、袖口のギャザーやボタンを隠す比翼仕立ての繊細さなど、間近で見るほど、細やかな手仕事にうっとりできる。ドレスアップはもちろん、デニムなどとも好相性。¥52,800(ブリエンヌ フォー ロク | ロク シンジュク)

〈ザ・リラクス〉はファブリック愛の深さで知られる、メイド・イン・ジャパン主義のブランド。こちらは、コットンがお約束のオックスフォード生地を、あえて高密度のポリエステルで仕立てたボタンダウン。シワとは無縁のパリッと美しい面が見事な、この上なく軽い“とろみ”シャツが出来上がった。ストンとした直線的な落ち感は、独自のパターンで実現。背側は左右から深くタックをとってあり、パンツにインした時に空気をはらんでフラットな後ろ姿を叶え、張り感と立体フォルムをキープしてくれる。¥29,920(ザ・リラクス)
Photo: Ayumu Yoshida Styling: Maiko Kimura Text: Rie Miyata