〈ルイ・ヴィトン/LOUIS VUITTON〉が2026年春夏コレクションを発表。インティマシー(親密さ)のなかに息づく個性を表現する。ショーのBGMには、ケイト・ブランシェットによる朗読が組み込まれた。
〈ルイ・ヴィトン〉2026年春夏ランウェイが讃える自由
ひそやかにまとう個性こそが究極のラグジュアリー

パリの「ルーブル美術館」がまだ王宮だった頃。17世紀、太陽王と呼ばれたルイ14世は、自身の母親アンヌ・ドートリッシュの夏の住居となるアパルトマンを宮殿内に設置した。フランス王妃が私的な時間を過ごした場所を、ニコラ・ジェスキエールは2026年春夏ウィメンズ・コレクションのランウェイに見立てた。インティマシー(親密さ)というテーマが、服と空間の重なりから鮮やかに立ち現れる。
コレクションを形作るのは、緩やかなシルエットに淡い色合い。ランジェリーやネグリジェを思わせるルックも目立ち、大きなリボンなどの甘口モチーフも登場した。
ランウェイはまるでベッドサイドのように、親密で少しレイジーで、優しい空気に包まれた。ジェスキエールらしい凛とした女性像が、今回は力を抜いた柔らかい顔を見せている。微睡む、愛する、身支度をする…そんな日々の瞬間を、ジェスキエールはアール・ドゥ・ヴィーヴル(暮らしの美学)と解釈し、そこに息づく個性を掬い取ったのだ。
その美学は、各ルックのディテールにも込められている。
ショーの間中かかっていた楽曲は、ミュージシャン兼音楽プロデューサー、タンギー・デスタブによるもの。心地よい旋律に、トーキング・ヘッズの「This Must Be the Place」の歌詞を朗読する女優ケイト・ブランシェットの声が重なる。宮殿内に響く「Home is where I want to be」というフレーズからは、インティメートな場面への愛が漏れてくる。
“インドア的”装いを反転させて親密さを表現した2026年春夏コレクション。どこへ行こうとも、もしくは行かずとも、自分らしい在り方を探ること。その自由こそ、ファッションが与えてくれる贅沢なのだと語りかけてくる。
ショー会場には、世界で活躍する俳優やアーティストらが集い、豊かな個性を光らせた。
自分自身を何よりも尊重し、自らのために服をまとう。メゾンが抱く信念を、それぞれが体現していた。
Text_Motoko KUROKI




























