確固とした信念、フィロソフィーを持つ人の装いは素敵である。そんなロジックから、 スタイリスト上杉美雪さんと共に導き出したのは、アイリーン・グレイに学ぶ、知的ファッション考察。
アイリーン・グレイに学ぶ知的ファッション考察
アイリーン・グレイ/プロダクトデザイナー、建築家
白いブラウスに映し出す気高きデザイナーのプライド
1878年アイルランド生まれ。20代でパリに移住し、女性インテリアデザイナー、建築家の先駆けとなる。1929年に完成させた自邸[E 1027]はル・コルビュジエを嫉妬させたと言われるほど、当時のデザイン界に衝撃を与えた。愚直なまでに自身のスタイルを貫きながらも、それを顕示することはなかったという謙虚な人柄、有名な横顔のポートレートの凛とした佇まいから導き出したのは、繊細なブラウスとミドルスカートのコーディネート。
【Eileen Gray’s voice】
“創作においては、まずあらゆることに疑問をもたねばならない。”
ディテールにメゾンの矜持が宿るセーラーカラーのブラウスからは気高さすら漂う。異なる生地をはぎ合わせ、ヘムをアシメトリーにカットしたプリーツスカートを合わせて、クラシックとモダンを絶妙のバランスでミックス。
ブラウス ¥875,000、時計〈ボーイフレンド〉 ¥460,000(共にシャネル | シャネル カスタマーケア)/中に着たボディスーツ ¥26,000(ザ・グレイト・エロス | ドゥロワー 青山店)/スカート ¥129,000(セドリック シャルリエ | ショールーム リンクス)/リング ¥94,000(ソフィー ブハイ | ストラスブルゴ)
マン・レイのスタジオ出身の、当時気鋭の写真家だったベレニス・アボットが1926年に撮影したポートレート(左ページ)。アイリーンは亡くなる前にプライベートに関する書類や写真などをほぼ焼却してしまったそうで、そんなエピソードにも彼女の人柄が見てとれる。
鉄やガラスなど、当時最先端の資材を積極的に使ったアイリーン。モダニズムの影響で作り始めたスチールパイプの家具は彼女の代表作。ベッドで食事をとるためにデザインされたこのテーブルはトレイの高さが調節できる。
アジャスタブル・テーブルE 1027 ¥138,000(hhstyle.com青山ショールーム)
淡雪のようなレースがロマンティックなジョーゼットクレープのブラウス。その中にはブラではなくボディスーツを重ねて、肌を見せすぎないのが知的な女のたしなみ。
ブラウス ¥875,000(シャネル | シャネル カスタマーケア)/中に着たボディスーツ ¥26,000(ザ・グレイト・エロス | ドゥロワー 青山店)
カップ・マルタンの[E 1027]、その後に建てた自邸[タンプ・ア・ペア]。彼女が作った2軒の家はいずれも海を臨む地にあった。映画『ル・コルビュジエとアイリーン』(15)で見られるように、夏の海辺ではカンカン帽を被っていただろうか。
ハット ¥9,800(フライング クラウド ハット | ビームス ボーイ 原宿)
「家は何よりもまず、人の住むところでなくてはならない」と語ったアイリーン。機能美をこよなく愛した彼女ならきっと、この歩きやすさと革新性を備えたPVCパンプスを賞賛することだろう。
パンプス ヒール7cm ¥85,000(ジャンヴィト ロッシ | ジャンヴィト ロッシ ジャパン)
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参考文献: ピーター・アダム、小池一子訳『[新版]アイリーン・グレイ 建築家・デザイナー』(2017 みすず書房)/『Casa BRUTUS特別編集 ル・コルビュジエの教科書。』(2009 マガジンハウス)
Photo: Masayuki Ichinose (W) Styling: Miyuki Uesugi (3rd) Hair: KENICHI for SENSE OF HUMOUR Make-up: Akiko Sakamoto (3rd) Model: Saadi Text&Edit: Kayori Morita Props: Miki Onuma