料理研究家の有元葉子先生に、キャベツを無駄なく使った料理を教えていただいたあとの2人のプライベートトーク、どうぞお楽しみください。
森 星 × 旬の野菜 「半径5mのサステナブル」 VOL.10 「心で感じる大切さ」について、有元葉子さんとトーク
〝心〟があってこそ
知識を上手に活かせる
森 星「キャベツはしっかり水を吸わせておくと、あんなに甘くなるんですね!驚きました!歯ごたえもよくて、すごくおいしくかったです。早速、今日買って帰ろうかな」
有元葉子「それはよかったわ。シナシナしているキャベツだと、どうがんばったっておいしくならないのよね。だから、それをシャキッと生き返らせるにはどうしたらいいか考えてみる。そうすると『水分が抜けた状態だから、水分を吸わせたらいいんだ』って分かるわよね」
森 星「〝おいしそう〟な状態をイメージしながら考える、ということですよね。そういえば先日、京都を訪れたとき、骨董に触れる機会があったんです。『とりあえず、触って、重みを感じてみて』と言われて。骨董の知識は全くないのですが、なんか好きだなとか、自分の手にしっくりくるなとか〝感じる〟ものはあったんです。そういう〝自分の心の動き〟に気づくことが大切なのだと実感しました。知識や情報を取り込んで頭で考えるのも必要だけれど、それだけだと、やっぱりバランスがよくないのかなって」
有元葉子「そうね、頭で考えなくていいと思うわよ。人間が頭で考えることなんて、ろくなことない(笑)」
森 星「先生に言われると、すごい説得力(笑)」
有元葉子「頭で考えることって先入観にもなりうるわけで、それより私は〝自分がどう感じるか〟を優先させるわね。骨董の話でいうと『この器は安土桃山時代の貴重なもので、値段は3,000万円です』なんてスペックより、その器を自分がまず好きなのか嫌いなのか、が何より大事」
森 星「以前、先生が『味覚って人それぞれ違うから、食べ物を振る舞うときは、食卓に塩を置いて、好みの味にしてもらう』とおっしゃっていたじゃないですか。それを伺って、好き嫌いに正解も不正解もないんだって、すごく印象に残ったんです。自分の気持ちや考えをだれかに伝えるとき、頭でちゃんと考えて、上手に言葉にできたほうがスムーズだろうなと思うのですが、一方で、頭でっかちになってしまうのも違うよなって」
有元葉子「そうね。知識はいくらあってもいいと思うし、それで頭でっかちになるのも問題ない。ただ〝感じる〟ことを忘れてしまうと、バランスが悪くなってしまうわよね。パソコンの画面でただ検索しているような、表面的な知識になってしまって、自分のなかに蓄積されない」
森 星「そうですね。心が動かないと、自分も本当の意味では理解できないし、相手にも伝わらないですものね。先生が『分量だけ覚えても意味がない』とおっしゃっていたように、料理にも通じることですね!」
日本は世界に誇る
森林大国!
森 星「ところで先生、屋久島は行かれたことあります?」
有元葉子「ないんですよ。星ちゃんは行ったことある?」
森 星「この前、行ったんです!よく〝呼ばれる島〟と言いますが、いろんなタイミングが重なって〝呼ばれた〟のかな(笑)。実際に訪れて知ったのですが、屋久島は岩状の島で、そこに苔が生えて植物が生息している。もちろん屋久杉もそうで、だから成長スピードもすごくゆっくりで、年輪が詰まっていて、樹脂もたっぷりだから腐りにくい。屋久島だからこそ、育った杉なんですよね」
有元葉子「そうそう、根をすごく深く張らないと、生きていけないのよね。だからとても丈夫。屋久杉って、確か樹齢1,000年以上はあるのよね」
森 星「そうなんですよね。『もののけ姫』のイメージからか(笑)、屋久島って人間が入ってはいけないような場所という印象をもっていたのですが、実際は人間によっていい方向に生かされている部分もたくさんあって…。流れ着いた屋久杉をうまく活用していたりとか」
有元葉子「そうなのね。屋久杉はもう伐採禁止だものね。そういえば、屋久杉の最後の伐採に立ち会った京都の銘木屋さんが知り合いにいて、その方のお店に屋久杉が置いてあったんだけど、店中が杉のいい香りに包まれて…本当に素晴らしかったです」
森 星「屋久杉の香りって、濃くて本当にいい香りですよね!宿泊した施設にある、サウナの内装にも屋久杉が使われていたのですが、本当に心地よくて…いいパワーをもらいました」
有元葉子「屋久杉は、屋久島に根ざした自然のものだからパワーがあるのよね。そういう自然の森林はいいんだけれど、たとえば人間がお金儲けのために、先のことをよく考えもせずに木を植えたり、伐採したりするのがよくないのよね。一度手を入れてしまった森って、自然ともとの状態になんて戻らない。だから、一度手を入れたのなら、責任と覚悟をもって、ずっと付き合っていかないといけないのよね。森がもとの生態系に戻るのにはとてつもない時間がかかるということを、人間がきちんと知らないといけないわね」
森 星「そうですよね。飛行機の上から見ると、日本って想像以上に森が多いし、その森はとても美しい。毎回ハッとさせられます」
有元葉子「世界に目を向けてみても、こんなに緑の濃い国ってそうそうないわよね。だからいいかたちで持続させないとね」
森 星「本当にそう思います。いい森と水と土があって…外国の方も、日本に来ると驚くみたいです。今日先生と話していて、改めて日本の森をめぐりたくなりました」
有元葉子「あら、いいじゃない『森さん、森をめぐる』」
森 星「いい番組できそう(笑)!先生、ゲストで来てくださいね(笑)」
有元葉子「もちろん、是非呼んでちょうだいね(笑)」
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森 星
1992年生まれ。東京都出身。モデルとして国内外の雑誌や広告等で活躍。途上国の女子を支援する公益財団法人プラン·インターナショナル·ジャパンのアンバサダーを務め、YouTubeやInstagramなどのSNSを通して体にも環境にも優しい生活を提案。創業者の一人としてCDを務めるtefutefuでは、日本の伝統的な食や文化を尊重しつつ現代に馴染む形に再編集し、世界に発信している。
Instagram:
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@tefutefulab
tefutefu HP: tefutefulab.com
YouTube: Hikari Mori
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有元葉子
料理研究家。3人の娘を育てた専業主婦時代に、家族のために作る料理が評判となり、料理家の道へ。素材の魅力を引き出したシンプルでおいしい料理、洗練されたライフスタイル…。本質を見極めた軽やかな生き方は、多くの女性の憧れの的。著書に『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』(SBクリエイティブ)、『「使いきる。」レシピ』(講談社)など多数。
公式サイト: https://www.arimotoyoko.com/
Instagram:@arimotoyokocom