焼きいもは、日本の冬の風物詩。年々歳々、すがたを見かける機会は減っている気はするけれど、たまに軽トラの拡声器から流れる「♪いしや〜きいも、やきいもっ」を聞くと、耳が喜ぶ。「♪おいし〜い おいし〜い とってもおいしいやきいもだよッ」と誘い上手なパターンもある。
私がいつも買うのは、冬場の週末、公園の脇に停まっている焼きいも屋さん。煙突から煙が上がっているから、遠くからでもすぐわかる。この店の人気の理由のひとつは、種類が選べること。日によって鳴門金時、紅あずま、シルクスイート、紅はるか……二、三種類、大小を組み合わせて熱い石の上に並べてあるから、おじさんは商売上手だ。
冬場のさつまいも天国は、誘惑がたくさん。私も、アルミホイルで一本丸ごと包んで魚焼きグリルで焼いたりするけれど、手を替え、品を変え、いろんなさつまいも料理を楽しんでいる。子どもの頃、大好きだったさつまいもごはんを自分でつくるのはうれしいものだ。一センチ角くらいのコロコロに切り、少し水に晒してから引き上げ、米に混ぜて炊くだけ。味つけは塩と酒少し、ごはんとさつまいもが甘く溶け合うおいしさは、寒い冬のごほうびみたいな味。
おかずとしてよくつくる小さな料理に、ざっくりマッシュしたさつまいもの温かい一品がある。裏ごしなどの面倒な手順は一切なし、柔らかく塩ゆでしたさつまいもをフォークの背で粗く潰すだけ。ゆでたて、潰したての熱いところにバターかオリーブオイル(バターはこっくりしたうまみ、オリーブオイルはさっぱりした風味。そのときの気分でチョイスしています)、きゅっと締まったレモンの酸味と香ばしいナッツが、おとなの味。
【材料】
さつまいも一本(約300g)
粗く刻んだナッツ類(無塩のアーモンド、マカダミアナッツ、松の実など好みのもの。私は数種組み合わせて入れている)1/4カップ分
レモン汁大さじ2/3
バターかオリーブオイル大さじ1 1/2
【つくり方】
①皮つきのまま、さつまいもを厚さ1cmのいちょう切りにする。
②鍋に湯を沸かし、塩(分量外。小さじ1くらい)を入れ、①のさつまいもをゆでる。
③柔らかくなったらザルに入れて湯を切り、全体を揺すって水分を飛ばす。
④ボウルに入れて粗く潰し、温かいうちにバターかオリーブオイル、レモン汁、ナッツを加えて混ぜ合わせる。
さつまいもの種類によって、口当たりや風味が変わるのが面白い。鳴門金時や紅あずまはほくほく、シルクスイートや紅はるかはねっとり……いろんな種類が出回るようになったさつまいもの多彩な味を知りたいとき、シンプルな一品だからこそ違いがよくわかります。出来たての温かいひと皿はさつまいも天国!