この時期は、毎年同じことを言いたい。「お米のおいしい季節になりました」。黄金色の稲穂が秋風にたなびく様子は、日本の原風景のひとつ。
新米を寿ぐには、感謝を込めておいしく食べる。これに尽きます。
そこで紹介したいのが大豆もやしの炊き込みご飯。大豆もやし、牛肉、お米の組み合わせはちょっと意外でしょう? でも、相性抜群なんです。私はもう二十数年来、飽きもせずつくり続けている。
じつはこれ、韓国で知った料理なんです。韓国では大豆もやしの愛されかたがすごい。大豆もやしのスープやナムルは日常のおかずの定番だし、市場では大袋にぱんぱんに詰めて売られている。唐辛子やにんにくなどを使うしっかりした味が多い韓国料理だから、それらを受け止めるだけの度量を豆は備えている。それに、豆がついているもやしは食べごたえがあり、いっぽう、豆なしのもやしがひょろんと頼りなく思われるのは当然の流れだろう。
もうひとつ大事なのは、大豆もやしをゆでるといいだしが出ること。豆から染み出たうまみが、味の奥行きにひと役買ってくれるのも見逃せない。大豆もやしの炊き込みごはんはその〝だし効果〟を最大限に生かす一品で、大豆もやしのゆで汁で米を炊くんです。だから、無駄がなくて合理的。参考になる知恵はどんどん学んで生かしましょう。牛肉にあらかじめ調味料を揉みこみ、下味をつけておくのも韓国の調理スタイルです。
【材料】
大豆もやし(手に入りにくければ、子大豆もやし)150g
牛肉100g
(A 醤油大さじ1/2 砂糖小さじ1/2 酒小さじ1 おろしにんにくひとつまみ すりごま小さじ1 ごま油小さじ1)
米2カップ
(B 醤油大さじ1/2 塩小さじ1/2)
大豆もやしのゆで汁2カップ強
こしょう適宜
【つくりかた】
①米を研いでザルに上げておく。
②大豆もやしを洗って水気を切り、水約3カップを沸かした鍋に入れて、ゆでる。
③大豆もやしとゆで汁を分け、ゆで汁を冷ます。
④牛肉は包丁で細かく切り、Aを加えて揉み込む。
⑤鍋に米と❹の牛肉を入れ、その上に❸の大豆もやしをのせ、ゆで汁、Bの調味料を加えて炊く。
⑥炊き上がったら全体を混ぜ、こしょうをふる。
韓国では、椀によそったあと、唐辛子のたっぷり入ったたれ「ヤンニョムカンジャン」を足し、全体をよく混ぜて食べる。まっ赤に染まった刺激的なおいしさも忘れがたいけれど、まず、このシンプルなつくりかたで試してみてください。ひと口食べて「わ!おいしい」と驚くのではなく、とくに目立つところのない地味な味。でも、米のなかに潜む大豆もやしの存在感がじわじわ広がってきて、なぜかクセになる。だから、私自身も長年作り続けています。厚手の茶色のツイードジャケットみたいな感じ?
豆つきのもやしの美点について、ひと言。多く含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモン、エストロゲンと構造が似ているので、女性ホルモンと似た作用を発揮するのだそう。美肌効果も注目されています。