牡蠣と出会えるのは、真冬のごほうび。ぷっくり、むちむちに太った牡蠣は「海のミルク」と呼ばれるリッチな味わいです。煮ても、焼いても、蒸しても、滋味豊かなおいしさは無限大。つい先週末は、牡蠣と春菊とにんにくをオリーブオイルでさっとソテーし、ゆでたてのスパゲッティにたっぷりかけたら、これがすばらしくて!牡蠣は、誰にも等しく、そして惜しげなくおいしさを与えてくれる、とあらためて感激したのでした。
そんな牡蠣の魅力をあますところなく楽しめるのが、牡蠣めし。
なにしろ、牡蠣のエキスが充満する煮汁を米ひと粒ひと粒に含ませるのだから、無敵です。 ひと括りに〝炊き込みご飯〟のジャンルに収めてしまうのはもったいなくて、私は〝牡蠣めし〟と呼んでスペシャル扱い。そのくらい偏愛している。
何度も試行錯誤を重ねたつくり方をお伝えしましょう。最大のポイントは、あらかじめ牡蠣の煮汁をつくっておき、この汁でご飯を炊く。この方法に行き着くまでに何度も失敗を繰り返したのですが、当初は牡蠣と米をいっしょに炊いていました。たしか、子どもの頃、母がそんなふうにして炊いていたのを見て覚えていたから。でも、この方法だと、牡蠣に火が通り過ぎて身が縮み、硬くなりがち。ちょっともったいないな、と思いながら、あるとき気がついた。
牡蠣と米、それぞれ別に火を通せばいいんじゃないかな?
試してみたら大正解でした。牡蠣のうまみはまんべんなく米に染み渡り、牡蠣そのものはふっくら柔らかい。煮汁を冷ますための時間は必要だけれど、このおいしさを知ったら煮汁をつくるひと手間がうれしくなるほど。
【材料】
牡蠣約180g
しょうが(みじん切り)小さじ1
A(酒大さじ1/2 醤油小さじ1 塩少々)
米2カップ
【煮汁をつくる】
①牡蠣をボウルに入れ、塩少々(分量外)を加え、振り洗いして汚れやぬめりを落としてから冷水で洗う。
②小鍋に水2カップ半(分量外)ほどを入れて火にかけ、沸騰したら❶の牡蠣を入れて二分弱さっと煮る。
③牡蠣を取りだして醤油少々(分量外)をふりかけておく。煮汁はそのまま冷ます。
【米を炊く】
Ⓐ研いだ米、しょうが、❸の煮汁とAを加えて2カップ強にしたものを土鍋、または炊飯器に入れて炊く。
Ⓑ炊き上がったら❸の牡蠣を加え、さっくりと混ぜ合わせて蒸らす。
牡蠣めしは、牡蠣が大ぶりでも小さくても、どちらでも構わない。いったん存在感を消して米のなかに潜んだ牡蠣のうまみが主役です。この奥ゆかしさ、静けさがすばらしいのだけれど、口のなかに含むと牡蠣のおいしさが爆発!地味なのか派手なのかわからないところもすばらしい。