アボカドの和名が「鰐梨」と知ったときは、笑ってしまった。確かにゴツゴツの黒皮はワニそっくり。気になって調べてみたら、十九世紀末、スペインやメキシコからアボカドがアメリカに入ってきたとき「アリゲーター・ペア」と呼ばれていたのですって。その直訳だったんですね。
いかめしい獰猛な黒皮のなかに、美しいライムグリーンの果実が隠れている。見た目のギャップ、外と内側の色彩のコントラスト、いつも見惚れてしまうのだが、ビタミンやミネラルがぎっしり詰まっていることにも感動する。森のバターと呼ばれるのは不飽和脂肪酸に富んでいるため。栄養の宝庫のような果実だから、神さまが秘密にしておきたくて恐ろしげなワニの皮を着せたのかしら。
定期的に摂る習慣をつけたいエナジー・フルーツだけれど、生のままスプーンですくって食べたり、サラダに入れたりすることが多い。アボカドは空気に触れると変色するし、熟すと崩れやすく、熱を入れ過ぎると苦みが出たりするから、やっぱりそのままがいいよね、となるのも自然な流れ。
でも、熱いアボカドもなかなかいいんです。とろりと口のなかで溶けるクリーミーな心地がすばらしく、癖になる。私が好きなのはアボカドとベーコンの組み合わせ。じつはこれ、西荻窪のすばらしき和食店「のらぼう」で出会った。以前、メニューのなかにアボカドとベーコンの炊き込みご飯があり、店主・明峯牧夫さんの独創的なアイディアとおいしさに脱帽。以来、リスペクトを込めて炒飯に仕立てている。
【材料】二人分
アボカド1個
ベーコン(できればブロック)50g
パセリ(みじん切り)1カップ分
白ワイン(または酒)小さじ2
ご飯2膳分
塩・黒胡椒(粗挽き)適宜
レモン1/4個
【つくり方】
①種を外したアボカドを4センチ角くらいに大きく切る。
②ベーコンを1センチ角くらいの四角に切る。
③フライパンを火にかけ、脂を引き出しながらベーコンをカリカリに焼く。
④ご飯を加えてベーコンの脂で炒め、酒・塩・黒胡椒を振って、この段階で味を調えておく。
⑤火を強めてパセリを加え、最後にアボカドを加えて全体をさっくり混ぜる。
⑥皿に盛り、黒胡椒をかけ、レモンをきゅっと搾ってかける。
レシピを解体して再構成すると、「ベーコンとパセリの炒飯をつくり、最後にアボカドを加える」となるでしょうか。食べる前にレモンを少しかけると、とたんに味が締まってお洒落な方向へシフト。
ひと匙ごとにおいしさが違うところも、私の好みです。とろんと舌のうえで崩れるアボカドとご飯のコンビネーション、アボカドとベーコンが合わさったやんちゃな味、パセリ炒飯の優しい風味……くるくる変わる表情が味わいどころ。アボカドの華麗なパフォーマンスに出会ってほしい。
アボカドは追熟によって食べ頃を迎える果実だから、手もとでタイミングを計るのも楽しい。