多めにつくるほうがおいしい料理というのがあります。量が多いほうが風味に一体感が生まれたり、味がこなれたり。シチューや煮込み料理はその典型で、くつくつ煮ているうちに素材どうしが混じり合い、鍋のなかにプラスアルファが備わる。その逆は、サラダ。ドレッシングをかけてトスしたときが最高潮、この地点を超えると刻々と変化しながら一瞬の輝きは逃げてゆく。そんなふうに考えると、多めにつくってどんと構えている料理には肝っ玉母さんの頼もしさがある。
しっかり食べて栄養補給を心掛けていないと、元気もヤル気も奪われてしまう猛暑の日々。先手を打って、肉味噌で対策を立てようじゃありませんか。肉たっぷり、にらどっさり、味は少し濃いめ。三、四人前くらいたっぷりつくっておくと、暑くて台所に立つ気力も削られているときの安心感は申し分ない。
ひき肉料理の場合、つねに量が多くなりがちなので、なんとなく体育会系の気分になります。
【材料】
合いびき肉300g
にら(幅5mmくらいのみじん切り)1束
A(味噌大さじ2 醤油大さじ1 酒大さじ1 みりん大さじ2/3 粉唐辛子少々 おろしにんにく小さじ1)
ごま油小さじ2
【つくり方】
①冷たいフライパンに合いびき肉とAを入れ、木じゃくしなどで全体を練るようにしながらよく混ぜる。
②そのままフライパンを火にかけ、まんべんなく混ぜながら肉に火を通す。
③にらを加え、混ぜながら火を通す。
④仕上げにごま油を回しかけて混ぜる。
*最後にフライパンを傾けて脂分を集め、キッチンペーパーに含ませて取ると、さっぱりとした風味に仕上がる
「おや?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。そうなんです、いちばん大事なポイントは①「冷たいフライパンに合いびき肉とAを入れ、練るようにしながらよく混ぜる」の部分、これがおいしさを決める決定打です。
ふつうなら、まず合いびき肉を炒めてから調味料を加える。でも、こうすると肉に火が通って挽き肉ひと粒ずつが硬くなり、繊維のなかに調味料が入りづらくなる。いっぽう、冷たいひき肉に調味料を練りこんでから火を通せば、全体がふわっと柔らかく仕上がる。繊維のなかに調味料が入って肉がほぐれるんですね。だから、ぽろぽろの肉味噌じゃなく、しっとり口当たりの優しい肉味噌になるというわけ。この違いをぜひ実感してほしい。
外から帰ってきて、すぐ食べられるおいしいものがスタンバイしているとわかっているうれしさは格別だ。しかも、肉味噌は変化球どんとこい。ごはんにかける、そうめんやうどんに添える、豆腐にのせる、卵に混ぜて卵焼き、おにぎりの具……当日の都合と「自分の口」に合わせてなんとでも。私は、サニーレタスで包んで頬張るのも好きだ。肉味噌という肝の据わった料理を味方につけて、厳しい夏を乗り切りたい。

