昔、うっかり雅楽の笙(しょう)を習っていた時期があって、その時の先生はまるで天女のような方で、優しく穏やかで捉えどころがない魅力の持ち主でした。大変引きが強く、ご縁があったのでしょう。当時、私が新しく出会う人、知ったことは、全部、先生につながっていました。
「この前、アーユルヴェーダに行って」と話すと、「私も最近、ドクターと知り合って」が同じ病院の話だったりするのです。なにこれ、前前前世からのつながりですか?
立春に弟子仲間に再会し、先生がお好きだった岩茶を思い出して、久しぶりに飲む気になりました。何かにとりつかれたように集め、ヒマに任せていろいろ調べるうちに、またびっくりするようなことがわかるわけです。
岩茶の産地の武夷山は、易経の研究に欠かせない古代中国の儒学者・朱熹が愛し、50年以上住んだ場所だそうです。先生はお亡くなりになり、笙を忘れても、私はまだ先生の手のひらの上にいるようです。孫悟空のように。