──カルダン氏が作り上げたファッションについてはどう思われましたか?
ワイルドで、魅力的で、楽しい服だと思いました。発表当時は目新しく、驚くべきものだったのでは。カルダン氏が言うように、まだ見ぬ未来を生み出していたと思います。60年代の有名な「コスモコール」コレクションはもちろんですが、クリスチャン・ディオールを経て独立したばかりの50年代の服もクラシックに見えて実は上下や表裏が逆になっていたりします。本当に型破りで冒険心のある人です。
──そんなカルダン氏のことを映画にすることになったきっかけを教えてください。
実は成り行きでそうなったんです(笑)。カルダン氏に会える機会があり、いちファンとして、フェイスブック用に友達に自慢できる写真を1枚撮れればいいかな、くらいの気持ちで行きました。映画にも登場する72年製の車「AMCジャベリン」など、私たちのピエール・カルダンコレクションの写真をカルダン氏に披露していたら、わかった、じゃあいつから撮り始める?と聞かれて。そんな予定は全くなかったのですが(笑)、彼の人柄に魅了されていましたし、本当にドキュメンタリー映画を作ることにしたんです。
©House of Cardin – The Ebersole Hughes Company
──ではカルダン氏はわりと乗り気だったのでしょうか…(笑)。そして彼は映画製作にどの程度関わっていたのでしょうか。
進捗を把握してはいましたが、リミットを設けたり、スケジュールを強制したり、これはおさえておいてほしい、と言われることもありませんでした。作品がある程度できあがった段階で一度見てもらったら、「気に入りました。内容も全て事実です」とおっしゃったのでほっとしましたね。その後の映画祭のプレミアでは非常にアーティスティックでよく考えられている作品だとほめていただきました。私たちはフランスの文化と伝統に十分に敬意を払って映画を作り上げたつもりです。カルダン氏はじめ、関わった多くの人々と実りあるコラボレーションができたのでは、と思っています。
──仕事の話だけではなく、ジャンヌ・モローやビジネスパートナーでもあったアンドレ・オリヴイェとの恋愛関係を描くことにもNGは出なかったのですね!
私たちは恋愛関係がカルダン氏の人となりを知るのに重要な要素だと感じたので盛り込みました。決して彼のセクシュアリティについて語ろうとしたわけではありません。ジャンヌ・モローとの関係はカルダン氏の演劇への愛、アンドレとの関係はファッションへの愛の表れだったような気がします。
──映画にはたくさんの人たちがカルダン氏について語っていますが、どうやって選んだのでしょうか。
カルダン氏のもとで経験を積み、その後著名なデザイナーとなったジャン=ポール・ゴルチエとフィリップ・スタルクは最初から候補になっていました。ナオミ・キャンベルもレッドカーペットでヴィンテージのカルダンを着ている唯一のセレブなのできっとファンなのだろう、と推測していましたね。あとはパリのプロデューサーに紹介してもらったり、雑誌の記事で1行でも面白そうなエピソードを見つけたらそれを紐解いていったり。フェイスブックで情報を得たりもしましたよ。